てつこてつ

ジャニス リトル・ガール・ブルーのてつこてつのレビュー・感想・評価

4.5
ジャニス・ジョプリンというシンガーについては、さすがに自分も映画「ローズ」でベット・ミドラーが熱演した主人公のキャラクターの基となった伝説のロックシンガーであった事、そしてジャニスの代表曲の一つでもある「心のかけら」(PIECE OF MY HEART)は、美声というより唯一無二の魂の叫びのようなパワフルな歌声が刺さりまくってウォークマンに入れて旅先で度々聴くくらい好きな曲だが、それ以上の思い入れは、正直無かった。

アマゾンで本日配信終了という事で何気なく鑑賞したが、さすがはこの手のドキュメンタリーを制作するのを得意とするジャーナリズムが根付いたお国柄のアメリカだけあって、豊富な資料映像とジャニスの実の妹と弟、幾つか渡り歩いたバンドのメンバーたち、そして性に対しても奔放であった彼女が実際に付き合ったかつてのボーイフレンド、そしてガールフレンドまでもが登場しインタビューに応じているので、実に濃密な内容に仕上がっている。

アメリカ南部のテキサスの田舎町で生まれ育ったジャニス。公民権運動が盛んな頃に思春期を過ごした彼女はアフリカ系の人権を認めるべきだとの発言をして高校時代はずっとイジメにあった孤独な青春を過ごす。

ブルースシンガーとして最初は活躍した彼女がサンフランシスコに渡り新たなバンドを組んだことで彼女の人生は一変していく・・(この時代にジャニスと実際に付き合い同棲までしていたアフリカ系の女性がインタビューで登場する)。

LAで開催された大規模なポップフェスティバルやウッドストックのステージクリップなど、非常に興味深い。

このドキュメンタリーを鑑賞して一番心に残ったのは、ドラッグや酒などに溺れながらも折に触れては家族に手紙を出していたジャニスの家族を想う気持ち・・。そして一躍スターダムを駆け上がった後に、まさに故郷に錦を飾らんと高校の同窓会に参加した際に一人だけ浮きまくり、「アメフト観戦にもプロムダンスにも参加しなかった・・」と寂しげに自身の青春時代を振り返るインタビュー映像。

1970年10月にヘロイン摂取の急性中毒で27歳で夭折した彼女にとって、おそらく真の絆を感じる事が出来た最後の恋人は、音楽業界とは全く関係がない、世界中を自由きままに旅行して回る飾り気のないバックパッカーだったというのもどこか納得が行く。また彼の望みからヘロインを何とか絶とうとしていた姿こそ、破天荒なイメージとは程遠いジャニス・ジョプリンの素顔なのだと感じた。

エンディングロールでは、生前のお母様がファンから届けられた手紙を読むシーンやジャニスに多大な影響を受けたというPINKやジュリエット・ルイス、ジョン・レノン&オノ・ヨーコ夫妻がジャニスの死についてテレビインタビューを受ける資料映像なども流れるので最後までお見逃し無く。

一人の人物の生き様を描いたドキュメンタリー作品としては、ほぼほぼ満点の完成度。
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