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ジャニス リトル・ガール・ブルーのayukaのレビュー・感想・評価

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これをみてジャニスを好きにならない人がいるのか。彼女の孤独と自分の孤独を重ね合わせない人がいるのか。彼女の目の奥に潜む孤独をみていると何とも言えない、胸の奥になにかがつっかえて苦しい気持ちになる。

60年代はきっとクソみたいな時代だったんだろう。50年代のクソみたいな安定と平凡と物質主義への反抗もあったんだろうけど、もっと荒れたものがあったはずだ。ベトナム戦争もそうだろうけれど。いつだって多分、若者にとってはその時代はクソみたいな時代なんだろうけど。
みんなが既成概念に反発をして、一丸となって、そのうねる波の中に音楽というパワフルなものを持って、リーダーとなった人たちの責任というのは計り知れないものがある。ジャニスもそうだし、ジェリーガルシアもそうだ。ドラッグが溢れている中、そんな押しつぶされそうな期待と責任の中にいたら、私だって手を出さない自信がない。期待と責任以外にだって、ひどい世間のありさまや情勢に、ジャニスのように繊細な人間が耐えられるのか。最後にジョンレノンが言っていたが、クスリに手を出す原因を解消しなければいけないということ。でもその時代にはクスリを使って大勢の人が逃避したがったということ。

このドキュメンタリーをみていると本当に、ステージの上のジャニスジョプリンと、ステージを降りた時のジャニスの差が分かる。力強くて独立していてカッコいいジャニスから、自信のなさそうなもの静かそうな、目の奥の孤独が露わになったジャニスへ。全てはいじめから始まった、とは私は思わない。いじめも含めて、いろんな、本当にいろんな出来事(自分に直接的な関係がなくても)が彼女の繊細な心を蝕んでいってしまったんだろうな。
当時南部で差別反対を訴えたこと。そんなことが許されなかった時代。彼女は本当に他人の心の痛みがもともと分かる人だったんだ。そして道徳心を貫く勇気があった。もし彼女が今の時代に生きていたらな、と思う。色々な人々に対して寛容になってきている現代に感心してくれただろうか。あるいは、今のクソみたいな時代にもっと道徳的な正しさを求めて行進しただろうか。
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