Neki

ガタカのNekiのレビュー・感想・評価

ガタカ(1997年製作の映画)
3.6
1997年の映画にしては描いている近未来性がちょっとファッション性に欠ける。予算が足りなかったのかな。言ってしまえば、時代を考慮してもちょっとダサい。青、黄、緑、黒、画面を覆う色使いは面白いけど、少しシーンとシーンの繋がりが雑に思えるところもある。
でも、一貫して生命に対する叙情詩的な眼差しが美しいと思った。生命の進化は幾重にも重なる死体の海を泳ぎきるようなもの、と以前読んだ漫画に書いてあったけど、この映画に出てくる海も、それを競い合って泳いでいく行為も同じ。命の誕生を連想させるメタファーだろうか。しかもそのチキンレースに、遺伝子的に劣等な兄が優秀な弟に勝つんだから。男女が肌を重ね合う時も背景は海。

とてもロマンチックな映画だと思った。遺伝子記号であるGTCAを用いたタイトル、海を泳ぐ兄弟、母なる宇宙への旅立ち。生命への賛辞を感じる。SFというフィクションの枠組みを借りて、海と宇宙を使って生命の起源を考える。とてもロマンチックだ。

遺伝子を前にして人種も国籍もないって登場人物はいうけど、結局は遺伝子が今の社会の人種と国籍と性別の役割をしているわけで、すり替わっただけ。人間のそれ以上ない根源的情報である遺伝子への差別をあけすけに描くことで、実社会の差別のくだらなさを象徴、してるのかもしれない。
ちょっとダサいけど、でもいい映画だった。
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