えるどら

ガタカのえるどらのレビュー・感想・評価

ガタカ(1997年製作の映画)
3.8
能力至上主義の行きつく先、残酷な世界観に恐れを抱く

優秀な遺伝子を選択して子供を作れるようになった世界では、平凡や劣等な遺伝子は差別の対象となっていた。
性別や人種の差別が無くなったかわりに遺伝子による差別が横行している。

この世界観をすごくリアルだと思った。
この世界は近い将来の日本に訪れるのではないかとすら思った。

少子高齢化・物価高などの財政問題が一部の恵まれた人とそれ以外との差を拡げ、やがて断絶を起こるんじゃないかと思った。
そうした断絶が生まれたとき、恵まれた人の方に社会が合わせられるとこの映画みたいな苦しい世界になってしまうのかもしれない。

現代は未曽有の少子高齢化社会なのに物価高でしかも賃金が上がらない。
多くの親たちは生まれた子供を育てることが精いっぱいだし、そもそもお金が無いから子供なんて産めない。
お金を持っている親は金銭的・環境的に投資してより優秀になっていく。
そうやって少しずつ「お金を稼げない」「結婚できない」遺伝子は淘汰されていく社会になりつつあるように思う。

そもそも生涯未婚率は年々増加の傾向にあるらしい。
お見合いや職場結婚が無くなって、結婚できる人が減っているそうだ。
80年代ごろまではお見合い制度があって、普通の人でもだいたいみんな結婚ができて子供も作れた。
優秀な子供もたくさん生まれたが、そうではない普通の子供もたくさん生まれて、そんな人々にも就ける仕事があって、家庭を持つこともできた。
マッチングアプリなどで出会いの可能性は増えたはずなのに結婚できる人は減っている。
むしろマッチングアプリが主流になった現代では「利用料・交際費が払えない人」「他の同性より魅力が劣ると見られた人」が淘汰されていっているように感じる。

「お金がある人が有利なのは当たり前」とか「素敵な人が得をするのは普通」とかそういう話ではなくて、問題なのは”全体で見たときの上位層だけが得をしてそれ以下が沈んでいく弱肉強食みたいな社会”は良くないということだ。
国民全体がそれなりに豊かになって初めて「お金がある人が有利なのは当たり前」「素敵な人が得をするのは普通」がまかり通るんじゃないかなと思っている。
無知な僕には具体的な解決策が提示できなくて悔しい。

当然、国の方針を決める人たちは既婚者であり子供を育てている。
それは今後も変わらないだろう。
選挙に行くのも、絶対数が多くて、お金も時間も子供も持っている年配層・老年層がほとんどかもしれない。
我々のような独身で金も時間も無い若年層では絶対数では敵わないのが悔しい。
もしこのまま少子高齢化や物価高や賃金問題などの根本的な問題が解決しないまま既婚者や高所得者を優遇し続けたら貧富の差・遺伝子の差は拡大し続け、やがて「ガタカ」のような価値観の世界になってしまうかもしれない。
未来のヴィンセントが遺伝子詐欺をしなくてもそれなりに楽しく生きていける国になってほしいなとそんなことを考えた。
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