青山

ガタカの青山のレビュー・感想・評価

ガタカ(1997年製作の映画)
3.4

DNA操作で産まれた人間が「適正者」とされる近未来。自然妊娠で産まれた「不適正者」のヴィンセントは、宇宙飛行士になる夢を叶えるため、適正者のエリートだったが事故で脚を負傷し車椅子で隠遁生活を送る男ジェロームの身分と遺伝子を借りる契約をする。
そうして「ジェローム」として宇宙局「ガタカ」に潜り込んだヴィンセントだったが、ある日上司が何者かに殺害される。局内に落としてしまっていた睫毛などから不適正者の「ヴィンセント」が犯人と目されてしまい......。


フォロワーさんと鑑賞会をするために2度目の鑑賞。
前回観たのは10年くらい前で、そん時はあんまハマんなかった記憶がありつつ私も大人になったし今観たら面白いかも......と思ったけどやっぱりそんなにハマらなかったです......(まぁ普通に面白いんだけど)。

とりあえず、本作は1997年の作品なんですがまさにそのくらいの時代を感じさせる無機質で淡々としていつつ1994生まれの私としてはどこか懐かしさも感じる映像の質感とか色合いはめちゃくちゃ好きなんですよね。
本作は違うけどこの時期に流行ったどんでん返し系のサスペンス映画とかも結構こういう雰囲気の作品が多くて、そういうの好きな身としても懐かしい気持ちで観れました。
またメインキャストのイーサン・ホークとジュード・ロウとユマ・サーマンが絶妙にどこか人間離れした未来人っぽいビジュアルなのも良い。

そうした人間も風景も機能的で無機質で冷たさを感じさせる中にあって、映画自体も大仰な演出とかBGMとかは抑えめで静かに進んでいくんですが、そんな冷たい表面温度の下ではヴィンセントの夢を叶えるための努力やジェロームとの奇妙な関係性が次第に友情になっていく様などアツい人間ドラマも渦巻いています。「泣けるSF」なんて呼ばれる本作ですが、そうした冷たさの中にある感情が静かなまま爆発するような結末は分かってはいても(2回目だからとかじゃなくて初見でも分かるレベルのオチなんだけど)込み上げてくるものがありました。

またサスペンス要素も結構濃くて、ガタカに出勤するたびにDNA検査されたりして、殺人事件が起きることでそれがさらに厳しくなったりするのをどうやって乗り切るのかには毎度ハラハラさせられるし、刑事が家まで来ちゃう場面とかもハラハラしっぱなし。あとどんでん返しってほどじゃないけどちょっとした意外な展開もあって(いや私がぼーっとしてて気付いてなかっただけ?)、SFとしての設定が緩めなのもあってSFというよりはスリラーとして観た方が面白い気がします。
というか、どうしてもSFとしての設定がわりとざっくりしているので「いやそんな簡単に潜入できんやろ」とか「てかそんだけ技術が発達してるなら脚の怪我くらい治せるやろ」とかは思っちゃうんですよね。まぁ面白いからそんなこたぁどーでも良いっちゃ良いんだけど。

と、こうして感想を書いてみるとなんか褒めてばっかりになっちゃうんだけど、なんでかそんなに好きとは思えないのは何でなんでしょう......。もう単純に感覚的な好みの問題としか言えなくてうまく言語化できないのでモヤりますけど、例えば主人公の家族がだいぶ酷いんだけどそこんとこあんま描かれなかったり、ヒロインのユマ・サーマンが綺麗なだけのお飾りみたいな感じでほぼ存在意義のないキャラクターだったりして、あまりにも男同士の友情だけしか描かれていないのがだいぶ物足りないとかはあるかもしれないですね。あとはストーリーの流れにもあんま意外性はなくて設定も目新しい感じはなく、SFに期待するワンダーを感じなかったのもデカいかも。

という感じで、観ればまぁまぁ面白いんだけどなんかそんなにハマれない......という印象が2回目観てもやっぱり再確認された形になりました。そういうこともある。
青山

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