井出

キングスマン:ゴールデン・サークルの井出のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

麻薬をめぐる論争を端的にまとめつつ、物語を作っている。
まず麻薬組織の長がいるが、彼女の言い分はもっともだ。麻薬より砂糖の方が人を殺しているし、なぜお酒やタバコがよくて麻薬はいけないのか、と。確かにそうだ。飲酒運転で殺される人もいる。タバコはひとを癒すが体には悪い。麻薬はタバコのように人を癒すだけ、人を心地よくしたとしても運転しなければ良い。
そこで彼女は世界中の麻薬に毒を混ぜ、彼らを人質にアメリカ大統領にこう言う。麻薬を合法化しろと。さもないと彼らを殺すと。
アメリカ大統領はその要求を飲むのか。いやそうはいかないのが面白いところ。彼は麻薬なんてものを吸う悪者を全員殺す、またとない機会だと喜ぶのである。
そこで大統領を補佐する女性がたしなめる。麻薬を吸う人が全員悪いわけではない。たまたま料理に混入していた、苦しくて一時の気の緩みで使ってしまった、治療のために利用した。全ての麻薬使用者が悪者とは限らない、と。彼女もまた、日々の激務ゆえに、麻薬に手をつけてしまっていたのだ。
しかし大統領は聞き入れない。そこでキングスマンは動く。人質たちの命を保護するために。
でもそれを阻止しようとする者が身内にいたのである。彼は逆スパイか、それとも大統領の手先か。どちらでもなく、彼は自分の意志で阻止しようとするのである。彼には恋人を、麻薬中毒者に殺された過去があったのである。確かに麻薬を禁止する合理的な理由はないが、それでも麻薬が人を狂わせ、その被害に合う場合があるということである。彼の言い分はもっともではないか。
しかしキングスマンは、彼の妨害も逃れて多くの人の命を救うことになる。話としてはハッピーエンドである。
このことは何を示唆しているだろうか。重要なのはキングスマンは誰かの意見を肯定も否定もしないということである。キングスマンは残虐性の回避だけをしたのである。これは民主主義のとるべき最低限の規範であると思う。どんな意見も自由に示され、できる限り議論されなければならないが、一方が他方の意見をねじ伏せるために残虐な選択をした場合、これは民主主義の原則が崩れることになってしまう。いくら自由が認められるべきだとしても、これはいけない。

高樹沙耶のクレイムメイキングをぼくらはもう少し真面目に議論すべきではないか。

アクションシーンは最高でした。スタンリートゥッチも、ヒーローもののオタクが喜びそうな感じも、エルトンジョンも。
井出

井出