Omizu

私の血に流れる血のOmizuのレビュー・感想・評価

私の血に流れる血(2015年製作の映画)
4.5
【第72回ヴェネツィア映画祭 コンペティション部門FIPRESCI賞】
『甘き人生』『シチリアーノ 裏切りの美学』など三大映画祭全てで受賞しているイタリアの名匠マルコ・ベロッキオ監督作品。

想像の100倍ヘンな映画だった。最初はクラシカルな魔女裁判ものかな、と思うんだけど、どんどんそこから逸脱していく。最終的には吸血鬼と詐欺師の闘いという書いててもよく分からない話に。

中世イタリア、神父の兄が自殺し、悪魔と契約し彼をたぶらかしたとされる女になんとか罪を認めさせようとする弟だが、意志とは反対に彼女に惹かれるようになり…

過去→現在→過去というトリッキーな時制の操作が面白い。上記のような中世宗教もので始まり、唐突に現代イタリアへと転換。「伯爵」と呼ばれる老人はどうやら吸血鬼であり、財務監査官と偽った詐欺師(中世パートの弟と同じ役者、名前)をなんとか返そうとする。そしてまた中世に戻り、「猊下」と呼ばれるほどの宗教者となった弟が監禁していた女の封印を解くと、そこには昔と変わらぬ見た目をした女が…

なんだこの話は。過去と現在で繋がりがあるようでないような。いや、確かに共通する要素はあるんだけど、話はイマイチ繋がっていないように見える。

でも非常に美しく面白い。女は兄とは本当にはどういう関係だったのか、そして本当に悪魔と契約しているのか。彼女は異端者か聖者か…全てがはぐらかされる。

中世パートの晩年の弟フェデリコと現代パートの「伯爵」は同じ役者。っして中世パートの最後に「復讐が怖い」とフェデリコは発言する。

もしかすると吸血鬼になったのは彼女の復讐なのか。

女性に対する過度な宗教観が気にならなくもないが、ぶっ飛んだ設定と構成なのにクラシカルで骨太な魅力を称えた傑作だ。マルコ・ベロッキオ恐るべし。
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