カリオット

灼熱/灼熱の太陽のカリオットのレビュー・感想・評価

灼熱/灼熱の太陽(2015年製作の映画)
4.3
バルカン半島の民族間の対立は根深い。突然昨日の隣人が敵になり殺し合うことなんて、日本に住んでいると想像もつかないことだ。これらがほんの最近、実際に起こったことなんだと。

自然の描写が象徴的だった。山も木も草も海も変わらずそこにあるのに。緑豊かな自然と人々の憎悪の対比がより残酷に見えた。

癒えることのない戦争の傷跡。時は流れているのにそこの時間は止まってしまっていたかのようだった。

最初の話(戦争勃発直前)が個人的に一番印象に残っている。恋人を追いかけた青年が撃たれたあの瞬間、私の心臓はグッと何かに掴まれた。しばらく口が空いてしまった(と思う)。それだけショッキングだった。異なる宗教を信仰している、違う民族なだけなのに、なぜ人は異質なものとして憎み、排除し、殺し合うのか。まだ無垢で奔放な若者であった彼らの冒頭の平和さがより際立つ。

愛は全てに打ち勝つのだろうか?

この映画のように民族の融和が進んでいたらいいな、と思った。
久しぶりにこれほど心が揺さぶられる映画に出会った。忘れられない一作になりそうです。
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