むさじー

正しい日 間違えた日のむさじーのレビュー・感想・評価

正しい日 間違えた日(2015年製作の映画)
3.6
<「もしも‥‥」で描く男女の機微>

講演の予定日より1日早く現地に着いた映画監督のチュンスは、時間潰しに寄った観光名所で画家の女性ヒジョンに出会って、魅力的な彼女の気を引こうとコーヒー店に誘い、アトリエで芸術を語り、酒を飲みながら人生を語り合う。運命的な出会いをした男女が別れるまでの一昼夜の話だが、前半の「間違えた日」と後半の「正しい日」の2通りの展開で描く。
ほぼ同じあらすじながら、些細な言葉や態度の在りようで二人の関係が変わってしまい異なる結末へと展開していく。口説こうと下心丸見えの監督だが、前半は男の当たり障りのなさが狡さ、矮小さのようで女は引いてしまい、後半では忌憚のなさが正直さ、愚直さに解されて好感度がアップする。喧嘩別れの嫌な思い出になるか、少し切ない大切な思い出になるか、些細なボタンの掛け違いで大きく変わってしまう恋の行方と男女の機微を面白おかしく描いている。
本作がホン・サンスとキム・ミニの出会いで、二人のプライベートな関係がベースのように想像されるが、自身を投影させたダメ男をここまでデフォルメして俯瞰で見せられると、もはや自虐ネタを超えて男の願望という普遍性を帯びてくる。これをあざといというか潔いというか、自分を正当化しようという狙いも見えるが自嘲を込めているようにも思える。これが憎めないところで、くだらないけど面白い。
退屈か心地良いか、空虚と見るか趣きと解するかは観る人次第。男と女の微妙な駆け引きには滑稽さだけでなくほろ苦さが付きまとう。
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