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500年の航海の3110133のレビュー・感想・評価

500年の航海(2015年製作の映画)
4.5
芸術と生を編むこと、ポストトゥルースとは似て非なるもの

虚構と事実、歴史と想像、それらが時間をかけて複雑に絡み合い、根拠といった安定したものから緩やかに遠ざかっている。
その現場は編集にあったのだろう。
編集の最中につくり手は夢をみるように生を編み直している。
エンリケを経糸に、タヒミックを緯糸にして。

それはまさに歴史を編み直す作業だろう。
歴史的事実といった同一性を疑い、アクチュアルなものとして歴史を編み直す。
それをオピニオンとして主張するには、事実として共有されている歴史の前であまりにも脆い。この作品は歴史的事実に対抗するものとして主張するのではなく、歴史的同一性をユーモアをもってほぐしていく。その営みにひどく感動した。
私たちは安定した大地に住むのではなく、波によって泡立つ海を航海しているのだ。

ただし、デレクターズカットとしての後半は、映画館で観るには長過ぎた。途中何度も時計を見てしまった。
渋谷イメージフォーラムが寒かったことも要因かとは思うが、それだけではなく、彼のモンタージュについていくのに疲れたせいもある。
ということで点数は少し低め。今度は暖かい自分の部屋でゆっくり観たい。
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