けーはち

水戸黄門 天下の副将軍のけーはちのレビュー・感想・評価

水戸黄門 天下の副将軍(1959年製作の映画)
4.2
ゴージャスなオールスター映画でありながら、時代劇の定番と先の読めないサスペンス、史実に材をとったドラマとコメディが噛み合ってぬるいユルユル映画にならず、シリーズ最高傑作と評されるのも納得の逸品。

御老公は実子の高松藩主・松平頼常が乱心という噂を聞きつけた。かつて高松藩へ追いやられた兄・頼重を差し置き、次男ながら水戸の家督を相続した御老公はその償いのため、兄の子を後継者に据え、実子を高松藩に出したのだ。しかし、我が子の狂気が真ならば、自らの手で斬り捨て、共に果てる覚悟で高松へと乗り込むのであった。

助格コンビがそんな真面目なストーリーの裏で、コメディリリーフとして活躍する。今の時代劇ではさすがに考えにくい展開だが、女郎遊びをする助さんは遊女を口説いて本気にさせてしまい、旅先に彼女がついてくるのである(演者は丘さとみ、ぽっちゃりながらもかわいい)。

殺陣にも趣向が凝らされていて、山賊に襲われた際に素性を悟られぬよう、金銭の入った胴巻きをキャッチボールしながら隠れて撃退し、彼女が追いついてくる頃には「天狗の仕業だ」などと茶番を展開する。

肝心なところで権力のみならず戦闘力を魅せる月形龍之介の御老公は何気なさと威厳を両立していて、助さん(東千代之介)、格さん(里見浩太朗)コンビはやはり男前。ちょくちょく顔を出して意味ありげに絡んでくるちゃきちゃきした板前は大川橋蔵が好演。中村錦之助(後の萬屋錦之介)演じる高松藩主・松平頼常の狂い芝居は楽しく可愛げがあるし、彼を見守る腰元は昭和を代表する歌姫・美空ひばりが演じていて、水戸黄門なのに急に歌うよ~♫……あらゆる意味で東映の誇る時代劇最盛期を彩るにふさわしい超豪華作品だ。