ベルサイユ製麺

花蓮 かれんのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

花蓮 かれん(2015年製作の映画)
3.0
レビューの数!文字数!!

邦画の棚に背差しになって見えているタイトル『花蓮』。瀬戸内寂聴先生の官能的作品『花芯』と混同しておりまして、「こんな神々しいの観るのは亡くなる寸前でいいかな」と放置してましたが、たまたま手に取ったところ全く別の作品だと判明。しかも、地方創生映画のようであるのだ!今、観る!!

茨城県土浦市。
今の仕事を辞め、蓮根農家を継ぐべきか否かと悩む男、周平。同僚に誘われ訪れたスナック?キャバクラ?(よく違いが分かりません…)で、日系タイ人のホステス、カレンと出会う。彼女は故郷に母を残し、日本で行方知れずになった父を探しにやって来たのだと言う。
カレンと触れ合ううちに、周平は少しずつ彼女に心惹かれていくのでした…。


低☆刺☆激
やさしーいお話。釘バットもソードオフショットガンも出てこない!ホントにその辺で日常的に起こってそうな事柄しか描かれませんよ!
⚫︎男女間の感情の行き違い
⚫︎カレンの父親探し
⚫︎差別されてる?と悩むカレン

…ぐらいが主なトピックです。でも、作品の性質からすると、このくらいが良い気もします。主役はあくまで土地ですもの。
…ですもの、なのだが、あんまり土浦が魅力的に撮れてない気がしますな。基本的には蓮田と農道、あとお寺?神社?とか普遍的な田舎の風景ばっかりで、かつ撮影がまるでパパの撮影した運動会ぐらいのクオリティでして…。
いや、正直言って難があるのは撮影だけでは無いのです。べたーっとした照明も、涅槃めいた響きでループし続けるチープな劇伴も、え…演技までも!全てがアマチュアっぽい。…というか、これホントのホントにプロの仕事では無いのでは?
何というか、広告屋とかの手を入れずに、可能な限り現地のスタッフで作った、マジの地元産の映画みたいに見えます。(想像ですけどね)
そんな事情か、なんかもうやたらと奥ゆかしいのですよ。地元の良い所を見せようとする気が全く感じられないし、不法就労のタイ人のいるスナックとか、まあまあダークサイドな気がしてネガティブな印象を受けます。レンコン農家の話なので勿論レンコン料理は出てくるのですが、それ以上にカレンの作ったタイ料理の方が印象に残るという…。

まあね、そんな不器用な感じが逆に良いって事もあるでしょう。急に発動する長尺の説明のためだけの台詞とか、作品全体に流れる“市役所が作った注意喚起の為のムービー”みたいな雰囲気も意外と好きです。ただ、どうしても心の中でうまく折り合いがつけられない点が有りまして…
タイトルにもなっている、日系タイ人女性のカレン。演じているのがキタキマユさん。ごく普通の日本人なのだよね。
…なんでしょう、このフガフガしちゃう気持ち?日本人が、カタコトの日本語を真似て、(架空の)不幸な身の上話をするという行為に対する、この心の座りの悪さ。
…うー。言語化出来ない、このフガフガ感は伝わるでしょうか?単純に、ホントの日系タイ人さんを使うわけにはいかなかったのでしょうか?なんか、“イギリス人がアメリカ人を演じる”とかとは違う、ややこしい問題が潜んでいるような、ああああぁ…。

えーと、一般的な娯楽映画としては正直物足りませんが、地方創生作品としては寧ろこのくらいレベルを基準点にしたいような気がしました。人柄は充分に伝わってきたと思います。個人的には茨城の人に良い印象しか無いですし。

この手の映画って、日本以外でも作られてるのですかね?もし存在するのなら、例えばリオデジャネイロのファベーラが舞台の作品とか観たい!釘バットもショットガンもバンバン出ますよ!!