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ラーンジャナーのBaadのレビュー・感想・評価

ラーンジャナー(2013年製作の映画)
5.0
インディアン・フィルムフェスティバル(IFFJ)2014にて公開。

残念ながら映画祭公開に終わりましたが、昨年日本で劇場公開されたインド映画の中で、多分これが一番完成度が高い映画だったのではないかと思います。三箇所で2回ずつ上映されたので、ご覧になって感動した人も多いのでは?

内容はズバリ、「愛」です。
パンジャーブ地方の恋愛伝説に題材をとっている、男女の愛を描いた映画ですが、単なる恋愛にとどまらない深い情緒と恋が現実と関わることで生まれる軋轢をリアルに描いています。

主演はラジニの娘婿ダヌーシュでこれでフィルムフェアベストデビュー(その年初めてヒンディー語映画に出演した俳優が対象)を受賞しています。とにかく演技力とダンスが素晴らしい。相手役のソナム・カプールは大変な美女で、『ミルカ』でもちょっとしか出演しないヒロインを演じていますが、こちらでは堂々たる主演。悪女に近い要素もあるヒロインを、若々しくみずみずしく演じています。演技が少し棒なのもこの役にあっていました。

貧しいバラモンの家に生まれたクンダンは子供のころ大学教授の娘、美しいゾーヤーに一目惚れ。折に触れ追いかけ回すが、十代の頃ようやく思いが通じる。宗教が違うためか引き離されるが、大学を卒業したゾーヤーは町に帰ってくる。

クンダンは押しかけでゾーヤーの父の使い走りのようなことをして一家の信頼を得るがそれでも宗教の違いか、学歴がないためか、結婚相手とは認めてもらえない。
様々な行き違いもありながら、ひたすらゾーヤーに尽くすクンダン。

クンダンのストーカーすれすれの献身とゾーヤーの女心の動きが自然で説得力があります。
愛に生きるクンダンと婚約者の志を守り政治家をめざすゾーヤー。
どちらも相手を思いやりつつもエゴを抑えきれず、見ていると、ああ、そういうこともあるだろうね、と思ってしまう。

アブドル・ラフマーンの音楽が、この作品ではとりわけ素晴らしい。この作品、愛の厳しさをこれでもかというほど描いているのですが、音楽の力で作品の世界に抵抗なく浸りきることができました。

また、後半は学生上がりの若者達の政党活動のエピソードが中心となりますが、きっちりドラマ的に演出していて見応えがありました。

踊りも音楽も物語も役者の演技も全てが素晴らしい、最高のインド映画です。インドに限らず恋愛映画でこれ以上の水準のものを見ることは多分あまりないのでは、と思います。

(去年一番のインド映画. 2015/2/24記)
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