偽名祐司

バジュランギおじさんと、小さな迷子の偽名祐司のレビュー・感想・評価

3.8
口のきけない幼い幼女迷子シャーヒダーがとにかく可愛いで終わる超絶泣けよ、デトックスしろよ映画。
勢いで観れるというにはちょっと長めの尺である。

話はアプリ参照で。
パキスタンの山奥で両親と暮らす少女シャーヒダーは生まれつき喋れなかった。両親が心配になり願いがかなうインドの聖廟へと旅をする。その帰りの列車で偶然彼女は母親とはぐれ、そのままインドに残ってしまう。

インドに暮らすパワンはハヌマーン信仰に非常に厚い、正直モノだが色々才能のない男。周囲からはバジュランギと呼ばれていた。バジュランギは迷子のシャーヒダーに出会い、懐かれ、困惑しながらも一言も喋れない彼女の為に親を探し送り届ける事を決意する。


口の聞けないシャーヒダー役の子がとにかく可愛いです。他人が何を言っているかは理解できるし、反応も出来る、ただ口が聞けない。表情豊かで眼で訴えてきて利発ときたらバジュランギでなくても笑顔になるし、面倒みないとなあって思うわね。
「あちゃー」とおでこを手のひらで叩く仕草や、車に悪戯しかける所とかもう最高に可愛いので観客全員が親バカになる事を保障します。

一方ゴツイ肉体を持つ心優しきでくの坊役のバジュランギにはサルマン・カーンが演じております。初登場のダンスが最高にノリノリですし、中盤の鳥ダンスもコメディ風味で楽しいです。

話も愚直なまでに正直でハヌマーン信者のバジュランギがシャーヒダーと共に旅をし、その二人を最初はインドのスパイと思い密着取材するパキスタンのキャスター。そこから情報を得て二人を追う警察。という構図で非常に話は解り易く、シンプルです。二人の旅とそれをネットで伝える映像により世界が動いていく流れは王道の展開と言えます。

当然ながら最後の国境のシーンはそりゃ涙無くしては観れない展開ですし、バジュランギとシャーヒダーが再び出会う所に最終的な感情の爆発を持ってきてるので人によってはもう号泣な訳です。個人的には「え、そこでカメラ止めるの?」って思いましたが。

インドからパキスタンまでの長いロードムービーとしてもそこそこ観れるわけで、美しい景色を観ながら二つの国の二つの宗教に対する考え方の違いを感じる事も出来ます。この辺は多少知識があるとなお楽しめるでしょう。

とここまでは絶賛したので多少微妙な点も。

シャーヒダーが喋れないっていう所とそれが最後の感情の爆発で遂に解放される展開は話の根本であるので良いと思いますが。
微妙に「主役俳優サルマン・カーン格好良く映す為の映画」感が強いのですね。特に初登場のダンス。一応「ハヌマーン様への愛が溢れた」って言い訳してますがちょっと無理がある。

そして話が「シャーヒダーをバジュランギが送り届ける」以外実は何もない点。バジュランギの過去話を前半結構尺使ってやるんですがそれが後半全く生きてこない点。10回落第し、格闘技もくすぐったくなって出来ない、何も才能が無いような話なのですが、それだけで終わってしまって単なるエピソードでしかないという。実はバジュランギの恋話もふたを開けてみると何の解決もなく終わり、風呂敷広げただけだったという。その辺3時間近くもあるのだから色々上手く纏めたりすれば良いのに、結局シャーヒダー側の家族の話も少なく、周囲のエピソードはばらまいただけで終わっている所が惜しい。

多少は残念な所もあるものの全体としてはとにかく「バジュランギ良い人だろう?シャーヒダー可愛いだろう?」「良い話だろう?さあ泣こうぜ?」と言わんばかりの素晴らしい映画。普通に褒めてます。素直な話観たい人には超お勧めって事で。
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