こむぎ

バジュランギおじさんと、小さな迷子のこむぎのレビュー・感想・評価

2.5
2020.1.31 鑑賞
かなり高評価な作品で期待していましたし、たしかにとてもストーリーとして面白かったのですが、やはりインドが制作した作品ということもあり、どこか「インド側の優位、パキスタン側の歩み寄りを前提とした、印パ融和」という意図が含まれているのではないかと感じてしまいました。
具体的なシーンについては割愛します、言い方はあまり良くないのですが少しパキスタン側を悪者にして(だしにして?)感動を作っているような印象を受けました。
また、TUFS cinemaでラーマーヤナを鑑賞しましたが、本作においてもパワンがハヌマーン的メタファーとして描かれていて、ラーマーヤナの存在を多少でも知っている人ならすぐわかるであろう濃さで描写されていたため、やはりヒンドゥー的な考え方が「善」であるかのような描き方だったのではないかと思います。
パキスタン側、国民に対してというよりは、パキスタンの体制(警察?国家?)を激しく批判する色合いを感じました。もちろん、ヒンドゥー教徒側に歩み寄りがなかったとは思いませんし、熱狂的なヒンドゥー教徒(パワンの恋人の父親)を少し批判するような意図もあったのではないかと思います。
それから、インド映画は多く日本に入ってきていますし、多くはおもしろく、ヒットを生み出している作品があるとも思います。しかし、パキスタンで作られた映画、たとえこのようなテーマを扱った作品があったとしても、同じように日本で取り上げられるということは、インドのそれよりは少ないのではないかと思います。日本の人々の(わたしの偏見ですが)インドは歌って踊って愉快な国、パキスタンはテロが頻発する治安の悪いイスラーム教徒の国、というイメージの作成には、このような映画、ストーリーがある程度関与しているのではないか、というようなことも考えてしまいました。
「Dawn」(パキスタンにおける有名な英字新聞の名前)のインターネット記事では、「この映画では2つの隣国間における調和への願いを表明している」というように高く評価される反面、別の記事ではカシミールの描き方、「2国の平和はあくまでインドの英雄の肩の上にあった」というように批判するような記事も見られます。
もしこの映画を観た方々が、パキスタン体制は過激で残酷だ、というように考えられたとしたら(そのようなことはないと思うのですが)少しその考え方は偏っているのではないかと考えていただけたらと思います。
もちろんわたしの考え方にも偏見はあるでしょうし、まだまだ知識の足りないところはありますが、南アジアに関して学ぶ1人の学生として、あえて感想をここに投稿させていただきます。
もちろんストーリーも良く、サルマン・カーンやその他演者たちもとてもいい味を出しています。このようなことを考えるきつかけになるだけではなく、1本の娯楽映画としてもとても面白いので、鑑賞してみる価値は十分にあると感じました。
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