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バジュランギおじさんと、小さな迷子のkomoのレビュー・感想・評価

4.8
パキスタンに住む6歳のシャヒーダー(ハルシャーリー・マルホートラ)は生まれつき言葉が話せない。それを憂いた母に連れられインドの聖者廟を参拝することになるが、道中で母とはぐれ、見知らぬインドの地で迷子となってしまう。
そんな彼女を見つけ、保護したのはインド人のパワン(サルマン・カーン)だった。共に過ごすうち、シャヒーダーは異教徒である上、インドと関係の悪いパキスタン人であることを知り困惑するパワン。
しかし自らの手で彼女を母親の元へ送り届けることを決意し、ビザなしで国境を越えるという危険な旅に出る。


【国境で抱きしめ合うということ】

フィルマであまりに評価が高かったので期待値爆上がりの上で観ましたが、最高に大満足でした。またまた素晴らしいインド映画に出逢えて嬉しいです!
シャヒーダー役の女の子が天使すぎて、その一挙一動を追うだけで癒されました☺️

迷子のシャヒーダーを送り届けることになったのは、誠実すぎて全く嘘が吐けない男パワン(愛称はバジュランギ)。
パワンの婚約者・ラスィカー役には、『きっと、うまくいく』のズビドゥビズビドゥビパンパラン♬でおなじみ、カリーナ・カプール。
その当時から年数経っているのに、全くお年を召されたように見えない…。そしてサルマン・カーンは50歳を超えていらっしゃると知り更にびっくり。外見的にはおじさんというよりお兄さんで通るくらい。

パワンとラスィカーは、『きっと、うまくいく』のランチョーとピアにも似て、最悪の出会いがやがて恋とダンスに発展してゆきます。ラスィカーの厳格な父の元、容易には添い遂げられないものの、二人が共に過ごしている時の幸せそうな光景のカメラワークがとても美しかったです。

前半はパワンの人間性や彼のインドにおける人間関係がじっくり描かれます。そしてシャヒーダーを連れ歩く中で、口を聞けないシャヒーダーの内面を少しずつ知ってゆき、彼女がパキスタン人であるという事実に行き着きます。
そして後半から物語は一気に不穏に。シャヒーダーを送り届けるためパキスタンへ入国しようとするパワンですが、ビザも持たず国境から正面突破しようとするため、当然怪しまれて痛めつけられてしまいました。
入国してからもスパイと間違われ追いかけ回されるため、あの手この手を使って逃げ回らなければならず。
しかしパワンは嘘が吐けない男。行く先々で「インド人か?」と訊かれると、馬鹿正直に「そうだ」と答えてしまう(その様子にはシャヒーダーですらヤキモキ)。
しかしこの正直さがやがて人々の胸を打ち、最高の結末へ。

印パ問題を厳しく組み込みつつも、陽気なミュージカルや人物同士の心温まる交流の描写により、安心して観られる作品です(終盤はハラハラしますが)。
なんといってもパワンとシャヒーダーの純粋っぷりに心洗われ、明日への活力をもらいました。

印パ戦争という言葉は聞いたことがありましたが、現代にまで両国にそうした確執が続いていることは恥ずかしながら知りませんでした。
国同士の対立や異国民・異教徒の排斥に関しては、近い将来に解消されるものではないと思いますが、本作のように未来に明るい兆しを示す作品はやはり尊いと思います。

パワンとラスィカーがシャヒーダーのためにレストランで歌い出すところ、ラストシーンに次いでマイベストシーン(*^^*)
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