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花と蛇のmasatのレビュー・感想・評価

花と蛇(1974年製作の映画)
3.8
傑作。完成度の高さと同等のイヤラシさ。
脚本家・田中陽造と谷ナオミの成せる技を、その素晴らしき恩恵を見事にフレームに収めた名カメラマン安藤庄平の技、それを見事にまとめ上げ、キレの良さを発揮する小沼勝の演出。四位一体の映画芸術、いやポルノである。映画的完成度の高さと同等の“男を硬くするモノ”が、そこに映し出されているのだ。

「カーさん、オレがやる!!」とトロロを塗りたくる爆笑トラウマ青年の青春ストーリー。そして、母性からの脱却と、新たなる人生の出発における母性との出逢いが、鮮烈。母との別離と伴侶との出逢い・・・いつまで経っても男は“母性”から逃れられない生き物なのであった。
そんな成長と射精の、オッ勃つ男の人生を、母の様に牝の様に受け止め、ともに悦びを交わし合う谷ナオミが絶品。

そして、悲壮感が全くないところが素晴らしい。なぜこれほどに大らかで、あっけらかんとしているのか?
黒人性行中の母親の醜態へのトラウマと殺人の顛末、惚けたどんでん返し。そんな母は、女に勃たない息子を心配しているが、抜け抜けと“大人のおもちゃ”店を経営し、夜は海賊版ブルーフィルムを演出し、その鬼才振りを発揮している。この痛快な母の設定に唖然としながら、ボーイ・ミーツ・ガールは進行していくのだ。

付け加えると、新たな母性と共に去る息子、その車を必死に追う母の姿は、まるでイタリア・ネオレアリズモ、ロベルト・ロッセリーニ顔負けの情感。そんな外連味が満タンなのである。
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