DaiOnojima

牝猫たちの夜のDaiOnojimaのレビュー・感想・評価

牝猫たちの夜(1972年製作の映画)
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 「㊙色情めす市場」「実録阿部定」などの日活ロマンポルノの傑作を作った田中登監督の第2作。

 70年安保後の新宿の歓楽街を舞台にした話。お話そのものは実にシンプルで、これといったドラマティックな出来事もなく淡々と進むが、学生運動敗退後の目標を失った空虚とシラケと痛切の時代の世相が実によく表れている作品。このふわふわ漂う感じの独特の空気感は、当時まだガキだった私はかろうじて覚えていて感じとることができるが、今の若い人がどう思うかはわからない。若松孝二の反権力ピンク映画の常連だった吉沢健がその虚無的な雰囲気をよく出していて、これは主演男優賞ものですね。虚無に絡め取られそうになりながらも、なんとか最後はしぶとい生命力で生き抜いていくトルコ嬢(いまで言うソープ嬢ですね)を演じた桂知子もいい味を出している。

70年代の新宿の風景は、リンク先の音源を聴くとまざまざと浮かんでくる(この音源はオリジナルじゃないが)。小田急百貨店が時報代わりに流していたオルゴールの音楽。70年代の日本映画にはこの幻想的な音楽がよく使われていましたね。この映画でも使われていて、映画の雰囲気にあってるんですよね。

https://www.youtube.com/watch?v=eCZBoX6p_wk
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