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アーノルト・シェーンベルクの《映画の一場面のための伴奏音楽》入門のJeffreyのレビュー・感想・評価

3.0
「アーノルト・シェーンベルクの《映画の一場面のための伴奏音楽》入門」

冒頭、大きな顔の銅像の口から水が流れる泉。高い所から男が煙草吸う。カメラに言葉を発する。亡命先LA、ウィーン、ベルリン、不安、破局、危険、画家カンディンスキー、ワイマールのバウハウス。今、言葉と資料映像が迫りくる危機を暗示する…本作は1972年にジャン=マリーストローブが監督と出演をしたタイトルの非常に長いドイツのカラー映画で、16分の短編である。この度、同時挿入されていたDVDから初鑑賞したがわりかし良かった。といっても、この辺の音楽に長けているわけでは無い為、的を得た評価が自分にはできない。

どうやらこの作品と一緒に入っていたもう一つの作品「今日から明日へ」は12音技法を用いて1928年から1930年にかけて作曲されているようだ。本作は時事オペラについての知識がないと非常にわからないことが多すぎると思う。とりわけシェーンベルクの生い立ちを含め、様々な経歴なども知った上で見なくてはならない。


こういった作品はただ見たことのない映画を消費しようと思って見てしまった自分のような者には、決して理解のできないようなテーマである。そこは非常に残念だ。とは言う物の映像から伝わってくるパワーのようなものが感じ取れる。

そうした中、運良くこの作品の題材を丁寧にまとめている書籍を見つけて、さわりの部分だけ読んでみたら色々と分かった。まず、時々オペラと言うのは両大戦間期に続々と制作、上映された時事的題材によるオペラを指し、代表作にはクルシュネックの"ジョニーは演奏する"やブレヒトがヴァイルと組んだ"3文オペラ"、ヒンデミットの"今日のニュース"などがあるそうだ。

と…こういった説明をしてもきっとわからないと思う。自分もまだ完璧に理解しているわけではない。だが、読んでいくうちにこのようなものがいずれも現代を舞台に時代のテンポを表現することで共通しており、当時かなりの人気を博していたそうだ。



この作品、物語映画と言うものを全く意識していないで、映像とテクストや音楽の組み合わせというか張り合わせてエッセイ的なスタイルを持続させている。それに多数の引用も見受けられるし、1935年の知識人による国際反ファシズム会議で発言した内容が朗読されている場面もある。

当時の資料映像を画面に映し出したり(写真)その中にはアウシュビッツ強制収容所の設計者が無罪とされた新聞記事が映されたり、ベトナム戦争においての悲惨な描写や、米国の戦闘機B-52などが写真として提供される。


余談だが、この短編映画はカラーとモノクロの映像が交差するのだが、カラー映画はイタリアでの撮影でモノクロ映像はドイツで撮影されたものである。

この監督が撮るドイツって基本的に白黒なんだよなぁ何か意味があるのだろうか…。
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