ギルド

タルロのギルドのレビュー・感想・評価

タルロ(2015年製作の映画)
4.5
【個性を殺してしまった不器用な男の物語】
身分証の発行のために写真撮影しに行く羊飼いの男を描いたヒューマンドラマ映画。

チベット映画特集にて鑑賞しました。
モノクロ調のヒューマンドラマ映画で、ストーリー展開的に「IDA」「COLD WAR」などのパヴェウ・パヴリコフスキ監督に近いものを感じました。

人物を映えるならば出来るだけ中央に寄せれば良いものをそこを敢えて外して隅に置く画面配置や時代/変化に取り残される様を強調するアートディレクションも含めて、哀愁を感じる1作かな。
そんな社会のシステムに置いてきぼりな男であっても一抹の幸福は確かに存在し、カラオケで歌う場面は本作の白眉でした。
夢物語のような光の使い方から善意で向き合う姿が逆にタルロの個性を追い詰めてしまう所に本作の良さである「尊厳たる個性と世俗のシステム・感情への衝突」が詰まっていると感じました。

それでも無理に社会のシステムや現代の世俗的な幸福に無理に適応しようとするあまり、個人の個人たる個性を結果的に殺してしまう「不器用さ」が一貫として描かれていて、そこをしっかり描くところが素晴らしい映画でした。
同時に素晴らしい映画ゆえに見ていて心が痛みました…こうゆう映画こそ、より多くの人にじっくり見て欲しい映画だなと思いました。かなり限定的に上映されていますが、DVDでも配信でも良いからもっと広めて欲しいです。
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