このレビューはネタバレを含みます
台湾本島から18海里離れた緑島で生まれた兄妹。しかし、幼い頃に両親の不仲で母は娘を連れて家を出て行き、それ以来兄妹は互いを知らずに育つ。やがて父も母も亡くなるが、両親に対するやり場のないわだかまりを抱いたまま大人になった兄妹の姿を描く。
両親が不仲になった時、子どもは幼いながらに罪の意識を持ってしまいがちだと思う。もしかして自分の存在が原因なのではないか。喧嘩を止められない自分も悪いのではないか。そんな罪を抱えた自分も嫌であれば、またそんな罪の意識を植え付けさせた両親に対しても憤りを覚えたまま育っていく。
しかし、親も傷付いていることを知っている。それゆえ、面と向かって親に怒りをぶつけることは難しい。そうしているうちに、自分の気持ちをぶつけられる相手を見つけられないまま大きくなり、親もこの世界からいなくなってしまう。
どこにもぶつけられない複雑な感情は、様々な形で表出する。それは絵画という形であるかもしれないし、夢という形かもしれない。自分の中に包み隠してきた感情の現れに対峙して、人は気付く。自分を傷付けたと思っていた相手も、実はそんな意図はないということ、むしろ自分のことを思ってくれていたのだということ。また、この世界で傷を抱えて生きているのは自分ばかりではなく、他の人も何かしらの辛い過去を背負っているということに。
人の心は、荒れ狂う海のように他人に牙を剥くこともあれば、凪の海のように他人を受け入れることもできる。過去の幸せな時間の思い出も、辛い記憶も受け入れた先に、人は子どもを授かる親として新たな人生を歩み始めることができるのだろう。