茶碗むしと世界地図

大恋愛の茶碗むしと世界地図のネタバレレビュー・内容・結末

大恋愛(1969年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

 ピエール・エテックスの1969年製作の作品である。

 これまでエテックスの映画を1本も見たことがなく、今回初めて見たのだが、全編通してサービス精神旺盛でみんなが楽しい映画を作ろうというやる気があって、お洒落でしっかり笑えるコメディだと思った。ギャグのオチは読めるが、ベタをとても丁寧にやっているので何度もフいてしまった。例えば、冒頭でピエール(ピエール・エテックス)がフロランス(アニー・フラテリニ)との出会いがカフェのテラスだったか店内だったかと回想をやり直す下りがあるが、3回やり直して4回目でツッコまれるというのがポイントだ。3の法則じゃないが、ちょうどいいところに踏みとどまっていて、こういう筋振りとオチひとつとってもセンスを感じる。あとエテックスは当然サイレント映画を通過していると思うが、バスター・キートンっぽい風貌で動きもコミカルだし、ルーツもそこかしこに感じる。

 今作にはブルジョワジーへの批判が込められているということらしいのだが、このへんは個人的にはあんまりピンとこなかった(背景知識や文化的差異もあるのかもしれない)。どちらかというと中年男性が若い女性に夢中になるのは見苦しいことこの上ない、というところが現代で通用すると思った。ピエールがアニエス(ニコール・カルファン)に心奪われて一方的に妄想が激しくなっていく姿は可笑しくも痛々しい。恋をした時に愚かになってしまう人間の様子を皮肉も交えて、ユーモラスにお洒落に描くのがエテックスの才能なのだろう。ただ、アニエスへの愛が消えたピエールの心理的なステップがちょっと強引なところは気になった。