湯っ子

シャイラクの湯っ子のレビュー・感想・評価

シャイラク(2015年製作の映画)
4.0
「シャイラク」とは、シカゴとイラクを合わせたスラングなんだそう。
ギャングの抗争が絶えないシカゴで殺害された死亡者数が、同年イラクやアフガニスタンに派遣されたアメリカの兵士の死亡者数を上回ったらしい。
そんなシカゴを舞台に、紀元前ギリシャの戯曲「女の平和」をアレンジしたのがこの映画。
狂言回しはサミュエル・L・ジャクソン。やっぱりさすが、「この人が出てくるとなんか面白い事が起きそう」感がすごい。

この「女の平和」がまた面白くて、男たちに戦争をやめさせるために敵同士の女たちが連帯して「セックス・ストライキ」をする話なの。
当時のギリシャも、戦争真っ只中で真っ向から平和を訴える作品は許されなかったらしく、作者アリストパネスは笑いに包んで平和を訴えたみたいだ。
厳しい検閲とそれをすり抜けてメッセージを送る表現者。今でも世界中あちこちで聞かれる話だなぁ…

スパイク・リー作品は最近になって観始めたのだけど、悲惨な状況を描いて見せつけるだけではなく、「じゃあ、そこから先、自分たちはどうしていかなきゃいけないか」っていうことを、わかりやすい言葉できちんとメッセージにしてる。そんなところが大好きだしリスペクト。
「Do the right thing」では「chill」、「アメリカン・ユートピア」では「選挙に行こう」。
本作では荒唐無稽なストーリーに乗せて、「愛でシャイラクをシカゴに戻そう、争いや暴力のない街に。子供を殺すな、目を覚ませ、善人になれ」ってことを訴える。

ヒロインやその友達たちの本当に爆発しそうなダイナマイトボディがまとう水着みたいな下着みたいな大胆ファッションも楽しいけど、同世代のアンジェラ・バセットが美しく、大人っぽいカジュアルスタイルが素敵だった。

登場する白人は2人。アホっぽい市長と神父を演じたジョン・キューザック。流れ弾で命を落とした少女パティの葬儀での彼の説教は圧巻!というわけで、見どころがいっぱいの作品でした。
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