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シスタースマイル ドミニクの歌のemilyのレビュー・感想・評価

3.3
 1960年代のベルギー、小さなパン屋で育ったジャニーヌは自由奔放に生きていたが、両親への反発や同級生のマリーのことがあり、修道院に入る。やがて持ち込んでいたギターで布教活動のため歌を作り、歌うシスター「シスター・スマイル」としてデビューを果たす。キャッチーな歌は皆に愛されたちまち有名になるが・・・

 「ドミニク」というポップな歌に秘められた真実。ポップでカラフルな色彩の小さなパン屋さんでの生活から一変して修道院へ。それは両親からの反発だけではなく、思いを寄せられる友人マリーから逃げるためでもあったように思える。反抗的な態度で、戦うか負けを認めて逃げるか。ジャニースにはこの2択しかない。彼女の作った歌は教会自体に、大きな利益をもたらすが、結局また逃げ出す道を選ぶ。過信し、突き進むが教会という大きな圧力にはとうてい叶わない。どんどん追いつめられていくジャニースは、受け入れてもらえず誰にも歌を聞いてもらえず、それでも宗教の歌を歌う。自由と修道女・・その両方を掲げて歌う彼女の歌は響かない。ダメになるとすぐに逃げだす。不器用で気性が激しい。そんな彼女を見捨てずにいてくれたのは結局マリーだけなのかもしれない。

 修道院での生活の描写も丁寧で、コミカルな描写も多く心和ませてくれる。「ドミニク」はキャッチーで一度聴いたら忘れられないポップな曲である。それだけにジャニースが辿った”逃げ”の生活とのギャップは知る必要のなかった事実なのかもしれない。しかし彼女は反発という逃げの中で彼女なりの方法で戦い、そして大切な愛に気が付くのだ。悲しい結末だからこそ、歌のポップさが永遠に残るのかもしれない。
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