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マジカル・ガールのsymaxのレビュー・感想・評価

マジカル・ガール(2014年製作の映画)
3.9
12歳の白血病の少女アリシアが秘密の願い事ノートに書いた願いは三つ。
一つ目は、"誰にでも変身できる"
二つ目は、"メイコ・サオリがデザインした『魔法少女まりこ』のドレス"
三つ目は、"13歳になる"

娘アリシアの最後の願いを叶えてやりたい父ルイスでしたが、ドレスは一点物で高額…現在失業中のルイスでは、とても買えるはずは無く…

余命いくばくもない娘の願いを叶えてやりたい一心で後先考えない父ルイスの行動は、闇を抱えた人妻バルバラ、そして、バルバラとの過去を抱えたダミアンを巻き込んで行く…

いきなりキャッチーで耳に残る長山洋子のデビュー曲"春はSA・RA・SA・RA"で始まり面食らいますが、物語は全く先の展開が読めず、それはそれは凄まじい作品です。

物語は、"世界"、"悪魔"そして"肉"と3章に分けられ、ルイスとアリシア、ルイスとバルバラ、バルバラとダミアンと三者三様の関係を見せる構成なのですが、見せる部分と"見せない"部分が絶妙なバランスで組み込まれていて、鑑賞中はずっと感嘆の声を上げてしまいました。

ポイントはやはり、ルイスよりバルバラ。

バルバラが心に抱える闇は深く、過去彼女に何があったのかは、全く見せません。

また、中盤バルバラが入る"トカゲの部屋"で何があったのかも見せません。

確実にバルバラとの間で何かあったからこそ刑務所に入り、出所時バルバラを異常に恐れながらも、バルバラから"守護天使"と呼ばれるダミアンについても、冒頭にあるエピソードは見せますが、過去2人の間に何があったのかは全く見せません。

観客の想像に委ねる演出によってテンポが悪くなる訳ではなく、むしろ観客を物語に引きずり込む力となり、悲劇とも喜劇とも取れる展開には異様な迫力があるのです。

まぁ、偶然か否かは別として、魔法少女に憧れる"病気の少女"とある意味病気な"魔法少女"に翻弄される2人の"教師"の物語とも言えます。

そこに、"春は、さ〜らさら"と流れる長山洋子の歌声がシュールなんだけど、冒頭とラストを綺麗に集結させていて本当に見事です。

…ところで、冒頭古本屋の帰り、ルイスが宝石店の前で何気に拾って捨てた物…あれはダミアンが無くしたジグソーパズルの1ピースなのでは?

この宝石店の上階に住むのがバルバラ…ここにダミアンのパズルが落ちていたということは…う〜む、実に奥の深い作品です…
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