グラッデン

マジカル・ガールのグラッデンのレビュー・感想・評価

マジカル・ガール(2014年製作の映画)
4.3
アリシアは、日本のアニメが好きな12歳の少女。家で倒れた彼女を病院に連れて行った父親のルイスは、医師からアリシアが白血病で余命が短いことを告げられる。途方に暮れるルイスは、アリシアの部屋で彼女の夢を書き留めたノートを見つける。
ノートには「誰にでも変身できること」、「魔法少女ユキコのコスチューム」、そして「13歳になること」の3つの夢が書かれていた。失業中のルイスは、何とか彼女の夢を叶えてあげようと90万円もする魔法少女の衣装を手に入れるために奔走する。

『マジカル・ガール』というポップなタイトルではありますが、作品自体はフィルム・ノワール。

本作は魔法を使えない魔法少女と魔女の物語であり、魔法をかけられたかのように女性のために自己犠牲を払う男性の物語だと思います。少女特有の万能感、穢れを知らないイノセントな存在=処女性がアリシアを「白の魔法少女」に変身させ、巻き込まれたバルハラの掴みどころのない魔性が彼女を「黒の魔女」に変貌させていきます。

少し話が脱線しますが、昨年、森川葵主演の映画『おんなのこきらい』を鑑賞した際に、女性監督の視点で女性が持つダークな部分を多角的に描かれていたことから、男性としては「女の子嫌い」というか「女の子怖い」という印象を強く受けました。
『マジカル・ガール』の鑑賞後、何となくそのことを思い出し、その時と同様に女性ならではの「怖さ」を感じました。その意味でも、本作の監督を務めたカルロス・ベルムト監督の女性に対する視点もまた驚かされます。

また、監督の作品作りの中でもう1つ気になったのは、語られることがなかった物語上の空白が多く存在していたのが印象的でした。文学作品で言えば「行間を読む」意識が鑑賞者に求められると思います。もちろん、行間を読み解くためのヒントは映像の中に仕込んでおります。監督もインタビューの中で「漫画を使っている」と述べているとおり、シーンの中に「語り」が潜んでいると思います。

魔法少女になりたい少女の小さな願いを叶える代償として、大人たちの決断から生じる闇がエスカレートしていくある種の黒魔術のようでもありました。そのように考えると、魔法は存在したのかもしれません。