Teriyaki88

マジカル・ガールのTeriyaki88のネタバレレビュー・内容・結末

マジカル・ガール(2014年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

なんとも不思議で個性的で芸術的な雰囲気が魅力的な映画。視聴後に断片的にフラッシュバックしてくる力がありつつ、一見するとなんの話やねんっ!となる。

私が受け取った結論は、ある愛情と情事へのトラウマの浄化だった。



幸の薄そうなヒロインバルバラとその元教師の関係は断片的な情報だが以下の理由をもとに考察してみました。

1、金持ちの家に最初に訪れたバルバラの身体には無数の傷があった。そしてバルバラが幼少期におちょくった教師は、幼児虐待の仲間がいるという刑務所でカウンセリングを受けながら服役していた。この手がかりから教師は、バルバラの身体を切り刻んだんではないかと。(売春をしていた時にされた傷かもしれないけど)

2、バルバラが赤子を殺す妄想をして笑ってみせたり、もと売春婦だったらしい断片から、切り刻まれた経験により精神疾患に陥り、その治療にあたった医者と結婚した。

3、元教師は出所する際にバルバラに会いたくないという理由で出所を拒んだ。

4、バルバラがトカゲの部屋でひどい強姦・虐待だかを受けた時に、幼少期の出来事がトリガーとなり、出所したて(かつて自分を傷つけたであろう)元教師に頼みごとをした。

5、バルバラの虐待を目の当たりにした元教師は、バルバラの半分嘘を間に受け復讐を助ける。

6、余命幾ばくもない白血病の娘の願いを叶えるためにバルバラを恐喝していた無職の教師に、元教師は自分を殺せと脅す。ここで無職の教師は強姦していないと誤解を解くが、バルバラが望んで性交したと告げるや否や、元教師は無職の教師を冷静に発泡して殺害。(強姦は許せても、普通の情事は許せない)ついでに回りの人を殺し、白血病の娘も多分射殺。

7、「渡しなさい」「渡せません。持っていないから」
の台詞は頭とエンドで挟まれているため、二人の間に他人は分かり得ない共通体験が内包している。

8、バルバラがハグを頼んだ無職の教師は中年だった。

他にも細かくあったように思うが、以上により、バルバラの幼少期の元教師との間にあった出来事が一種の忘れ難き快楽か激情かが、二人の間に残り続けていたのではないかと。あるいは性的投影ファザーコンプレックス的なことか。

そしてもう一歩深読みしてみると白血病の娘と無職の教師の関係、バルバラと元教師の関係は、物語とは関係ない設定上の相関関係にあると思う。元教師が無職の教師を射殺した表現は、トラウマの浄化を隠喩させた可能性があるのかも。

愛情がもとに生まれたある種のトラウマの浄化プロセスを隠喩的な表現を用いて描いたと思いに至りました。