サイクロプス

海賊とよばれた男のサイクロプスのレビュー・感想・評価

海賊とよばれた男(2016年製作の映画)
4.0
戦後の復興って大変だったんだ
こういう映画を見ると、身にしみて思う
誰にも迷惑かけてないから!
なんて口に出来ない
いろんな人の苦労のうえに、食べることに不自由しない世の中で暮らしている


そう言っておいてなんだけど、
この映画、昨今の「働き方改革」とかには間逆の方向で走ってる
国岡商店は、今なら完全にブラック企業だ
確かに従業員の首は切らない
その代わりに会社、というか店主の命令には絶対服従、ということだ
店主に身も心も捧げるつもりじゃないと、働き続けるのは難しかろう
と、21世紀のサラリーマンである僕は思ってしまう

とはいえ、傑出した企業家の話であるから、
ビジネスマンとして参考になるネタも多い
国岡店主は、難局に当たって、常に知恵を振り絞っている
もう駄目だぁと根をあげるのが普通の人
国岡は、常識を超えたところから俯瞰して、新機軸を打ち出す
シュンペーターがいうイノベーションと言ってよい
搾取するだけのブラック企業はもちろん、
前例踏襲の大企業も出来なくなっている点だと思う
知恵と勇気で苦しい時代を乗り切った、この“海賊”に最大限の賛辞を送りたい
でも、国岡商店で働く自信はないなぁ


全く蛇足ながら、前妻ユキのくだりはいらない
映画の限られた時間には収まり切らない
オチの付け方も、前時代っぽくて気に入らない
稀代の事業家を善人に仕立てあげることもないだろう