セガール幹事長代理

華魁のセガール幹事長代理のレビュー・感想・評価

華魁(1983年製作の映画)
3.5
時は明治。女を薬品で眠らせて勝手に入墨を彫る変態と、その変態に狙われる絶世の美肌を持つ遊女、遊女に惚れた挙げ句惨殺され哀しみの余り遊女の性器に取り憑く男、女性器に取り憑いた男の被害に合う性欲魔神のメリケン野郎どもが繰り広げる色欲と嫉妬が蜷局を巻く物語。

なぜ日本人は何かに付けて幽霊を女性器に憑依させたがるのか、というテーマで先日知り合いの法律家のおっさんと話していたら「現代の刑法学において胎児を傷つけるのは傷害でなく器物損壊にあたる。性器から独立して生命活動を行って初めて人間としてカウントされる法体制に対する皮肉なのではないか」という訳わからんことを言い出したので頭が良すぎる人はやはりどこか変なのか、と改めて痛感した次第だ。

最後の20分からは映画史上稀に見るふざけ方を繰り広げるのですが、そのおふざけの内容をわざわざレビューに書くのも無粋というもの。是非各々ご覧になって頂きたいので割愛させて頂きますが、いつも思うのはこの監督独特の、いやらしいことをしてる際の女性の仕草の撮り方にはまこと惚れ惚れさせられるということです。
身体を重ねる相手にお願いごとを聞いてもらった途端に唇を許す女の計算高さに背筋は凍り、はたまたまだ見ぬ亭主に操(みさお)を立てる為に事の最中声をあげない遊女なりの貞操観念の美学に胸を打たれます。
好意を寄せている相手と致す際だけに見せる、乱れた兵庫髷を纏う白い肌が赤く染まる様子を目にした時なんか、これ本当にしてるんじゃないの、と疑いたくなるぐらいなんですが、調べたら本当に致していたらしくて、それはちょっとルール違反なんじゃないかと観てて難しい顔になってしまいました。天晴です。

好兵衛な映像が目立ちますが、二転三転する話運びに釘付けになったし、性行為を「あんたの赤貝が甲をかぶったみたいだよ」と喩える、めちゃくちゃ下品なんだけどセンスの良い日本語の使い方の虜にもなりました。
音読したい文章です。

彫師の彼氏がいる人におすすめ。