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スランバー・パーティー大虐殺のmimagordonのレビュー・感想・評価

4.4
これはなかなかの出来。クラシック・スラッシャーではあるけれど、パジャマパーティーに参加する5人の女子高生含め主要7人の女性キャラクターたちそれぞれにはっきりとした個性があって、ただ叫んで殺されるだけではない「プロットの駒」以上のものがある。そして絡んでくる男子高生も女性キャラのヒーローに留まらない設定があって、それらが展開を読みにくくしている。意図的に設定された「お約束」キャラも男女共に存在するが、それがまたメインのキャラクターとの上手い対比になっている。ガールズトークの軽妙さもコミカルで、女性脚本家、女性監督ならではのリアリティだ。本来はよりスラッシャーのパロディ的作品にするつもりだったようだが、ロジャー・コーマンの意図によりよりストレートな作風になったとのこと。しかし現代的な視点から観ても既にフェミニズム・ホラーの先駆けと言えるようなストーリーと女性キャラクターの多様性を、スラッシャーブーム吹き荒れる82年にまさに「ジャンル映画」として成立させながら作り上げた功績はただ者ではないし、昨今の「お約束」を逆手に取った、アンチ・スラッシャーとでも言うべき作品に通ずる部分がたくさんある。

ホラー作品としてもしっかり怖い。ドリルを片手に目をギラギラさせながら執拗に追い詰めたり、物陰に隠れてじっと見つめる殺人鬼ラス・ソーンの不気味さは、マスクを着けたそれとは違う人間的生々しさがあって恐怖を増している。カルト的人気を誇るのも納得のハイクオリティなスラッシャー・ホラー。この手の作品が好きなら満足以上のものを感じること請け合いだ。
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