アキラナウェイ

さざなみのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

さざなみ(2015年製作の映画)
4.3
安藤龍平。
じゃなくて、アンドリュー・ヘイ。

同監督の「荒野にて」を観たいけど、U-NEXTではポイントという名のお布施が必要だから、一先ず無料配信のこちらを。

当時69歳のシャーロット・ランプリングに今更ながら夢中になってしまった!!この人、めちゃんこ演技上手い!!

「レッド・スパロー」のスパイ養成所のハニートラップ教官役がどハマりしていて印象に残っていたけど。クリップ中の「愛の嵐」の上半身裸にサスペンダーでナチ帽を被っているのが彼女だと知って、震えているナウ。

45years

夫ジェフ(トム・コートネイ)と妻ケイト(シャーロット・ランプリング)。
夫婦として寄り添い生きてきた45年。
今週末の土曜日には結婚45年を祝うパーティーが予定されている。

パーティーまで6日間。
仲睦まじく平穏に過ごしてきた夫婦の間に起きた小さな"さざなみ"。雪山で事故に遭い行方不明になっていた、ジェフのかつての恋人カチャの遺体が50年以上も経って見つかったと知らせる手紙が、2人の間に投じられた小石の様に、夫婦の心の水面に波紋を広げる。

邦題が珍しく、良い仕事をしている。

カチャの遺体が50年以上前の姿を保って氷漬けで見つかったと言うのも、何たる皮肉か。

同じ年数を生きて、年老いてしまった男と、かつての若さを保ったままのかつての恋人。

夫の心には亡くした筈の恋心が燻(くすぶ)り、
妻の心には認めたくもない嫉妬の嵐が吹き荒れる。

イギリス郊外の街を舞台に、パーティーが開催されるまでの6日間の夫婦の心模様を実に見事に描いている。

そりゃあもう地味だ!!
なのに堪らなく惹き込まれる。

それはシャーロット・ランプリングのポーカーフェイスな表情に垣間見える一瞬の動揺や、目の演技が素晴らしいから。妻の心の機微を確かに捉えて表現する繊細なその演技力には、正直参った。

そして迎えたパーティー当日。
以下、ほんのちょびっとネタバレ含みます。

















いやぁ。身の毛もよだつラストシーン。
思わず巻き戻して二度見した。

渾身のスピーチで愛を語り、満足げな夫。
45年前のあの日に流れた「Smoke Gets In Your Eyes / 煙が目にしみる 」をバックに踊る2人。

楽曲が最高潮のピークを迎え、ダンスが終わろうとするまさにその時、妻の手を握り観衆の拍手に応えようと腕を挙げる夫と、それを思わず振り解いた妻。この時の、振り解き方の激しさと表情。堪らぬ。

このシーンだけで、この作品の評価は爆上がりである。

うわぁ。
追いかけよう。アンドリュー・ヘイ。
追いかけよう。シャーロット・ランプリング。