水無月右京

シティ・オブ・ゴッドの水無月右京のレビュー・感想・評価

シティ・オブ・ゴッド(2002年製作の映画)
4.0
1960年代から1980年代にかけてのブラジル、リオデジャネイロのスラム街が舞台。そこで生まれ育ったブスカペ(兄はギャング、本人はカメラマン志望)の青春時代を振り返りつつ、スラム街育ちということで自然と接してきたギャングとの関わりを回想録形式で綴った作品です。

スラム街にはまともな職が少なく、生きていくには手段を問わず稼ぎが必要で、暴力とドラッグの発生源であるギャングの存在を身近にあるリアルなものとして描かれています。

ストーリーの中心人物は"リトル・ゼ"。彼は小さい頃から野心家で怖いもの知らず、1大勢力を築くに至ったギャングで、彼が成り上がっていく様は(教育上あまりよろしくありませんが)見ていてスカッとする要素がありましたし、そんな彼が最終的にはかつての自分のような子供に撃たれてしまうシーンでは、彼の人生から生じた因果を感じました。

本作、様々な人物が出てきます。彼らはそれぞれの運命を全うするのですが、社会全体が混沌としているがゆえ、ある種運命のいたずらからそうなってしまったんだと思いました。また、そうした彼らを、内省的な性格の主人公が淡々と回想しており、これが本作のリアリティー、生々しさを生んでいるのだと思います。

本作、単純なギャングの成り上がり映画として楽しむこともできますし、このような"世界"が今もなお存在しているのだということを再認識することもできます。まだ見たことのない方は、ためしにご覧になってみてはいかがでしょうか。