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耳(Ucho)のspacegomiのレビュー・感想・評価

耳(Ucho)(1970年製作の映画)
4.2
長らくソ連によって上映が禁止されていたチェコヌーヴェルヴァーグの重要作。
直属の上司が逮捕されたことを知り次は自分の番だと恐る官僚の男とその妻。晩餐会のシーンがほぼ男のPOVなのに対して、家庭内での夫婦の口論は引いたショット中心。繰り返しフラッシュバックされる晩餐会のシーンでは、四方からオフの声が漏れ聞こえ、妻を探す視線は大いに揺れる。
全体主義に呑まれ日和る夫を糾弾する妻は逃げるように性の対象にされることを拒絶する。ショットは夫中心でありながら、主体性をもって生き抜こうとしているのは妻の方であり、いつの間にか妻の物語へとシフトしていることに気づく。同時期のコミュニストものにありがちな主人公の男のために存在するようや記号的な女性像とは真逆の存在で魅力的。

あと、窓ガラスが割れ落ちるショットがとても良い。
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