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笛を吹く男のミスターのレビュー・感想・評価

笛を吹く男(2015年製作の映画)
3.8
息子の治療の道中でたまたま人里離れた村に立ち寄った親子が理不尽な悲劇に見舞われる。
韓国産の村ホラー。ハーメルンの笛吹きを原型にしつつ、韓国サスペンス特有の無慈悲さや激しい感情の発露を描いている。一部キャラクターの行動原理が不明な点があるのは否めないが、それでも展開の無慈悲さとラストの復讐劇には引き込まれる。ネズミを追い払ったのに、理不尽な疑いをかけられて暴行され、息子まで殺されて。そんな絶望的な展開からの復讐パートはカタルシスを感じられる。ハーメルンの笛吹きらしく、最後は子どもを連れ去るところも容赦がない。悪魔を見たでもイ・ビョンホンがラストに復讐を遂げた後に何とも言えない絶妙な表情をするのが個人的には印象に残ったが、この映画も同様。復讐を終えた父の顔には晴れやかさも狂気もない。ただ無が残るのみ。それまでの激しい感情の爆発とのコントラストがあるからこその切なさを感じる。
とにかく救いはないし、観た後に幸福感も残らない。それでも激しい怒りの高まりとその後に訪れる静寂を美しい音楽と残虐な殺戮の中に感じられる名作ホラー。
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