Yurari

ハドソン川の奇跡のYurariのレビュー・感想・評価

ハドソン川の奇跡(2016年製作の映画)
4.2
素晴らしかった。本編よりも、エンドロールの関係者インタビューが良かった。

元タイトルは、機長の名前である「Sully」だが、日本語版は「ハドソン川の奇跡」。
確かに奇跡的な出来事かもしれないが、サリー機長のインタビュー動画を見て、奇跡というより今までの経験、努力の結果という方が近いと思った。そして、奇跡、というのは彼に失礼な気がした。
サリー機長は、あらゆる事故の記録を記憶しシミュレーションをしたり、到着地の気候情報を1時間ごとに確認したり(普通は出発のタイミングで1度行えば十分らしい)などと、常に努力を忘れない。家族で小型飛行機に乗って出かける時も、最悪の事態をシミュレーションする。この辺りの描写が本編では描かれていなかったのが残念。エンドロールも含めての作品、という事なのかもしれないが。

本編の中で不可解だったのが、妻との関係。調査委員会に「家庭で問題は?」と聞かれて、「あなた方と同じです」と答え、何かしら問題を抱えているような印象を与える。妻との電話でのやりとりでは、一家の家計が危うい事も示唆。パイロット、しかも機長は比較的高給のはずなので、別居中?お金のかかるトラブルがある?などと想像したが、何もなく終わった。エンドロールでもそのような描写はなく、夫婦仲が円満そうだった。あれは何だったのだろう・・。

エンドロールでの娘さんのインタビューは考えさせられた。事故後、一家は世間から注目されるようになり、今までと同じ生活が送れなくなった。近所の人たちからもしょっちゅう声をかけられ、ちょっとした用事に数時間かかることも。皆、善意で声をかけてくれるから無下にもできない・・という娘さんの言葉から、その辛さがとても伝わってきた。
奥さんは、家族全員がPTSDだったとも語っていた。実際、機長は事故後48時間で6キロも痩せてしまったらしい。そんな状態でも、周囲の人は「英雄だ!」と騒ぎ立てる。当事者の立場を思い、そっとしてあげる、という配慮も必要だなぁ・・。
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