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ハドソン川の奇跡のokappaのレビュー・感想・評価

ハドソン川の奇跡(2016年製作の映画)
3.7
トム・ハンクスは勿論ですが、副操縦士のアーロン・エッカートとても良いです。航空機事故が題材ですが、本作については乗員乗客全員が無事であるということがあらかじめわかっているので安心して鑑賞できる。

実際に起きた事故のドキュメンタリー的映画なので地味と言えば地味。それも、事故自体はバードストライクから着水まで約3分ほどの出来事なので、事故前後のエピソードを引き延ばすしかないよなといった感じ。

機長、副機長の極限状態で冷静な様子がとても上手い。手に汗握ります。

とはいえ、調査パートでめちゃくちゃ厳しく尋問されるような描写がありますがこれは事実と異なるだろうなと。ストーリー上仕方がないと思うけど。機長vs NTSB調査官といった構成になっている。

航空機事故の原因調査はテロなどの犯罪以外の場合、責任の所在を明らかにして糾弾するためのものではありません。原因を明らかにして対策をとり、今後の航空運用をより安全にするために行うものです。機体の不備であれば、全機種の点検改善勧告を、パイロットのミスであればミスが起こらないよう計器の表示をわかりやすくする・訓練項目を増やすなど改善を行うといったような。ナショナルジオグラフィックで放送している「メーデー!航空機事故の真実と真相」を観ているとよくわかります。そのため、カクタス1549の着水事故につても機長は聴取は勿論受けたでしょうが、厳しく詰問されたということはないと思います。

この調査をしていたNTSB調査官を作中実名で登場させようとしていたようですが、すっかり“悪役”のような立ち位置になってしまった捜査官に実名を使用することに、サレンバーガー機長が反対をしたためその話は無くなったらしい、なんて話も。普通に通常通りの調査の様子であれは、調査官本人も機長も実名で構わなかったのではと思う。「メーデー」では調査官本人がコメンテーターで出演されているので。

機長と副操縦士の実際の映像を観ても、2人とも大変丁寧冷静で謙虚な様子です。実際の着水までの音声を聞いてもとても端的で落ち着いて対処している。素晴らしいパイロット達と思います。

“空港に行くまでに交通事故に遭う確率の方が断然高い”と言われるくらい稀な航空機事故に遭遇するのは不運な事ですが、両エンジン停止・高度もない・市街地上空と言う絶望的状態で奇跡的な着水(着陸)にこぎつける、特出して優秀なクルーの機体に乗り合わせているというのは幸運でもある。どっちと言えるんだろうか。
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