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ハドソン川の奇跡のvenom9のレビュー・感想・評価

ハドソン川の奇跡(2016年製作の映画)
4.0
USエアウェイズ1549便不時着水事故を映像作品化したものです。当時の報道はわりとはっきり覚えています。
コンパクトです。また、偏執的にリアリティを追求しています。なんでも、本作制作にあたり監督のクリント・イーストウッドは事故機と同じエアバスの機体を購入、実際の救助に使用された救助ボートを使用したとか。また、旅客機クルー、救助隊やボランティア、警察官、ニュースキャスターやパイロットなど、救出に携わった当時の関係者を本人役で多数出演させており、このあたりの彼の拘りは「15時17分、パリ行き」でも発揮されています。
しかしこの事故はよくぞ犠牲者を出さずに事態を収拾したものです。当時ハドソン川の水温は2度、気温は−6度だったようで、この状況だと長くて30分で意識不明、プラス15分程度で死に至るようです。記憶に新しい知床の遊覧船沈没事故時の知床の海面温は4度、気温5度です。いかに危険な状況だったか容易に想像できます。
トム・ハンクス(チェスリー・サレンバーガー機長役)もアーロン・エッカート(ジェフ・スカイルズ副操縦士役)も抑えた演技で淡々と物語が進行します。勝手な想像ですが、パイロットや旅客機クルー、救助に関わった人々が讃えられるべきであり、俳優の演技が目立ってよいものではないとクリントは考えたのかも。
事故後にサレンバーガー機長が事故調査委員会から容赦ない追究を受けるシーンがありましたが、実際はそこまでではなく手続きに則り粛々進められたらしく、国家運輸安全委員会の関与メンバーから本作に対し講義があったようですね。何かの手違いなのか、ドラマの抑揚のためなのかわかりませんが、ほんの少しケチがつきましたね。
(2021年9月 NETFLIXで鑑賞)
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