まぴお

ハドソン川の奇跡のまぴおのレビュー・感想・評価

ハドソン川の奇跡(2016年製作の映画)
3.8
【みなさんは直感とデータがあるとしたらどちらを信じますか?】

昨今、ビックデータをビジネスに活かそうという流れがきている。
ビックデータとは簡単に言ってしまえば様々なネット上のデータを集め
た膨大なデータ。それを行動パターンに分析し理論的に未来へ活かしていこうという流れだ。

そしてそれとは真逆とも言える発想。
理論ではなく感覚的にとらえること。この場合なぜその回答に至ったか
明確に答えづらいことが多い。

しかしその「なんとなく」が後々、正しかったということがよく見受けられる。
人間には、理屈を超えてわかったり、感じたりする瞬間・能力があるのだ。

これを直感力という。

つまり無意識の知性。

しかしこの直感は経験を積むことにより研ぎ澄まされることが実証されている。
スティーブ・ジョブズも「直感はとてもパワフルで私から言わせてもらうと知性よりパワフルだ」と述べている。

これはサレンバーガー機長の直感により155人の命が救われる。
そしてこの英雄がなぜ容疑者になったのか?これはそんな事実を元にした物語だ。

これまでのクリント・イーストウッド監督の作品と比較すると僕はすこし違和感を
感じた。この違和感は彼がよくテーマとして取り上げる人間の「贖罪」を今作では感じることができなかったからだ。これまでの彼の作品に出てくる登場人物は重い罪の十字架を背負いそれを購おうともがく苦しさを描いてきた。

しかし今作はどうだ。
救われない物語を描き続けた監督が救われた物語を描いているのだ。
小さな希望ではなく大きな希望をみせる手法をとる彼の今作は彼の心の変化の現れなのだろうか?

208秒間の中に隠された真実を知るとき。
生きるとは何かがわかるような気がする。
人は究極の死の状況に陥ったとき何を考えどう行動するのか?
生命としての答えがそこにあるように思える。


さて邦題の件について。
「ハドソン川の奇跡」アメリカでも当時ニュースで「Miracle on the Hudson」として何度も報じられた。しかしイーストウッド監督はあえて
チェズレイ・サレンバーガーのニックネームである「Sully」を選択した。
これは155人の乗客の命を救った彼への敬意の念からだろうか。
だとしたらそれが邦題に活かされていないのはなんとも寂しいものだ。

555本目
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