かえで

ハドソン川の奇跡のかえでのレビュー・感想・評価

ハドソン川の奇跡(2016年製作の映画)
4.3
もうただただ素晴らしいの一言。無駄のないシャープな演出でセリフも多くなく、静かな作品なのにとても心揺さぶられる。演出もキャスト陣の演技もすべてが完璧。心臓がバクバクするぐらい緊張するシーンもあったし、思わず涙が溢れる場面もあった。

非常事態に対して一人ひとりがそれぞれの立場で最善を尽くす、という点で何となく『シン・ゴジラ』を連想しながら観ていました。社会というのは名もなき一人一人の力が集まって成り立っているんだな、と改めて。そして、当たり前だけど生きている一人ひとりにそれぞれの人生があって。事件や事故、災害など、日常的に「被害者○○人」「死者○○人」といった言葉を耳にして麻痺している自分に気づいてハッとした。人の数だけ生活があって、その人を想う人たちがいる。そういった情報は決して只の数字ではないのだと。(『64 前編』を観たときにも似たようなことを感じたなあ…) たった3桁の数字を繰り返すだけなのに、あんなに泣けるシーンになるのは本当に凄い。

別々の人生を歩んできた他人同士が、自分のすべき当たり前のことを当たり前にしながら毎日社会が成り立っていること。何気ない日常、それだってもう、十分に奇跡的なことなのだと思う。
かえで

かえで