satoshi

ハドソン川の奇跡のsatoshiのレビュー・感想・評価

ハドソン川の奇跡(2016年製作の映画)
4.3
 イーストウッド最新作で、しかも主演がトム・ハンクスとあれば、見ないわけにはいかない、ということで、見ました。

 飛行機のパニック映画や、サスペンス、ヒューマンドラマと、様々な要素が合わさった、さすがの出来な作品でした。また、あれを見たアメリカ人の中には、アメリカという国に希望を持てた人も多いのではないか、とも思いました。
 
 この映画、まず、話の構成がすごく上手い。飛行機事故が主体の話であるのに、なかなかその場面が出てこない。代わりに出てくるのは、機長のサリーのPTSDによる悪夢です。具体的には、9.11のような、飛行機がビルに突っ込んで、大参事になるものです。

 そして、審問会でもあの判断は本当に正しかったのか、彼は本当に多くの命を危険にさらさなかったのか、が問われます。すると、観客も、結末は知っているのに、だんだんと真実は何だったのかが分からなくなってくるのです。不思議なことに。黒澤明の「羅生門」を彷彿とさせます。その疑念とサリーの自らへの不信が高まったとき、真相が明かされます。そこで明かされた真実は、事故の時に対応した操縦士たち、CA、そして、乗客人たちが一丸となって協力している姿であり、また、その不時着した飛行機の乗客を助けるために集まった人々の姿でした。ここに、アメリカ社会への、そして、人々の持つ善意への希望が描き出されていると思います。
 
 また、サリー機長は、プロとしてベストを尽くした決断だったことが明らかになります。ということで、プロ意識を感じさせる映画でもありました。
 
 飛行機事故から、人々の善意を描き、そこから、自分たちが住んでいる社会への希望を描いて見せる。そしてそれがエンタメとして面白いというこの映画。反則ですね。
satoshi

satoshi