エイデン

ビジョンのエイデンのレビュー・感想・評価

ビジョン(2015年製作の映画)
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インド、ゴア州ポンドレム
新築されたポンドレム警察署に新任のサティシュが赴任して来る
ふと中を見渡したサティシュは、ヴィジェイという男が座っているのを見つける
正直そうだと言うサティシュだったが、警官の1人は、彼が恐ろしいことをしでかしたことを語るのだった
時は少し遡る
手伝いの青年ホセと共に小さなケーブルテレビサービスを提供する“ミラージュ・ケーブル”の社長だったヴィジェイは、無学ではあったが仕事中もずっと観ている大好きな映画の知識で様々な問題事の相談に乗る知識人として知られ、その善良さも相まって皆に親しまれていた
そんなヴィジェイは、美しい妻ナンディニー、そしてアンジュー、アヌーという2人の娘にも恵まれ幸せな日々を送っていた
そんなある日、家族サービスでショッピングモールへやって来たヴィジェイは、娘のアンジューから、ゴア州中の学生が集まるキャンプに学校代表として選ばれたと聞く
参加費がかかるためナンディニーが止めていたものの、ヴィジェイは学校では学べないものを学ぶ機会だと参加を許可する
後日 キャンプに参加したアンジューは、その最中 ずっと自分のことをスマホのカメラで撮影している他校の生徒サムがいることに気が付くも、充実した時を過ごすのだった
その頃 ヴィジェイは新たな警察署を建築しているラネーと出会い近くの食堂に赴くも、店主マーティンに横暴を働いている悪徳警官ガイトンデ警部補とのいざこざに巻き込まれる
偶然店を訪れた警部にそれを告げ、その場を切り抜けると共に彼の面目を潰したヴィジェイだったが、それがきっかけでガイトンデに目を付けられてしまう
その頃、キャンプから帰宅したアンジューは突然サムの訪問を受ける
サムはキャンプの最中 シャワー中に肌を露わにしていたアンジューの姿を動画に収めており、それをネットに流されたくなかったら自分の言う通り夜に自分の元へ1人でやって来るよう脅迫してきたのだ
恐怖しながらもアンジューはこのことを母ナンディニーに告げる
2人にこんなことを止めるよう説得されるも、サムは怯むこともなく脅迫を続け、動画を削除する替わりにナンディニーに対しても自分の言うことを聞くよう迫るのだった
翌朝 ようやく仕事場から帰宅したヴィジェイは、泣き崩れている家族の姿を発見
事情を聞かれたアンジューが告白したのは、脅迫をしてきたサムを殺してしまったという事実だった



同国の映画『Drishyam』のリメイク作(インドでは言語の違いもあって、別言語版をリメイクとして作ることがあるらしい)
他3作同国リメイク作ほか、インドネシア映画、中国映画『共謀家族』としてもリメイクもされている

卑劣な男を殺した娘と妻を守るため、完全犯罪を成し遂げようとする父親を描く
インド映画でよく見る仰々しいBGMと過度な演出、あと長いことを除けばよくできたクライム・サスペンスになってる

宗教や民族、法を超越した家族愛の果て
父ヴィジェイの優しい冷酷さが終始光りっぱなし
そして完全犯罪を目指すヴィジェイを追い詰める警察官ミーラーとの息詰まる攻防
ミーラーも死んだサムの母親という立場で、親として守るべきもののため、相手の家族を壊していくという皮肉なドラマも秀逸

二転三転する展開も先が読みづらく、種明かしは爽快感に溢れてる
善悪を超えた苦しい選択の数々はインド映画とい上手く枠にとどまらず誰しも胸に来るものがあると思う
社会問題であるインド警察の暴力や格差社会なども背景に盛り込みつつ非常に上手くまとまった脚本なのは間違いない

ビデオスルーどころか現状Netflixでしか観られないという不遇さではあるものの、感動するレベルの出来の良さなのでオススメ
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