てれ

バジラーオとマスターニーのてれのレビュー・感想・評価

バジラーオとマスターニー(2015年製作の映画)
4.9
インディアンムービーウィーク2021にて日本語字幕で観賞。

マラーター王国のヒンドゥー宰相バジラーオとムスリム王女マスターニーの間に燃える破滅的な恋は、ペルシアの古典叙事詩「ライラとマジュヌーン」を彷彿とさせる。それに、バジラーオを慕うマスターニーの姿は、神に熱狂的な愛を捧げるスーフィー(神秘主義者)そのもののような気がした。宗教が絡んだ国の興亡で翻弄された2人の愛が、何よりも宗教的で崇高だったなんて圧倒されてしまうよ。

同時に、マスターニーを求めて狂っていく夫をそばで見ることしかできないカーシーの哀しみが、身を切るようなもので辛すぎる。取り残される側の気持ちがすごく分かってしまって、本作でいちばん可哀想なのはもちろん第一夫人のカーシーだよな……

一夫多妻制度と略奪愛と宗教的軋轢を原型なくなるまでどろっどろに混ぜた末路は言うまでもなく狂気的でたまらなかった。

そして所々に散りばめられた言葉の綾が鮮烈でおもしろい。例えば、
・ペーシュワー(宰相)候補になったバジラーオが、若さ故に
「白檀も匂うには時間がかかる」
と中年の高官から言われた時の
「たとえ若い棘でも刺すと痛い」
という咄嗟の切り返し
・バジラーオへの嫁入りを反対されても
「愛は信仰 どちらも許可はいらない」
と言い切るマスターニー
こういった機知が研ぎ澄まされている台詞に、いちいちときめいてしまった。お高くとまっていると言われればそれまでなんだけど、それでもこういう文学的な美しい薫りも感じられるバンサーリー監督作品は、とても琴線に触れる。映像美だけではない魅力も素晴らしい。

ダンスシーンもふんだんに入れられていて、どれも豪華絢爛で凄く好き。YouTubeでずっと観ていたものがスクリーンで観られたので喜びがたまらない。
Malhariは迫力がとんでもない豪傑な統治者バジラーオと軍人達の乱舞。さすが戦国の男達!って感じ。
Deewani MastaniとMohe Rang Do Laalはマスターニーのカタックダンスが優美だし、Pingaはカーシーとマスターニーが歩み寄って踊り合うところが最高だった。好きなポイントが尽きない…

ハマったんだけど、ハマることができたのは日本語字幕で完全に理解して観られたというのが大きい。だから上映されて本当に良かった。ありがとうございました…感謝です。
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