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三人の兄弟のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

三人の兄弟(1981年製作の映画)
1.5
No.701[三人の持つ寓意が強すぎて物語が負けている…] 30点

フランチェスコ・ロージの映画って文字通り硬い映画というイメージを持っていたんだけど、こんな物理的に硬い映画だと思わなかった。というのも2Kレストアした映像は勿論キレイなんだけど、ショットが真面目というか硬いというか凝った感じがあまりしないので疲れてしまった。

南イタリアの農家で老女が亡くなり、その三人の息子たち:ローマからやって来た判事のラファエル、ナポリからやって来た少年院でカウンセラーとして働くロッコ、トリノからやって来た労働者のニコラの三人兄弟が集められる。ここらの設定から本作品がマフィア裁判、キリスト教、労働闘争など戦後イタリアを指し示す寓意を多分に含むことは理解できるし、あとはどう動かすかなんだけどそれも真面目に向き合おうとしているというか下手くそ過ぎる。例えば何十年か振りに再会した兄弟に近況を語らせて人物の背景を導入するとことか判事のラファエルを交えた酒場での議論のとことかラファエルとニコラの言い争いのとことかは退屈の極み。三人それぞれをフォーカスしようとして発散する感じがどこかアイドル映画に似ている。頑張ってるのは伝わるが、どう考えても2時間で捌ける内容じゃないし、そう考えると「輝ける青春」は素晴らしい作品だったといえる。

逆に、ニコラの娘のシーンはどれも素敵なんだけど、世代間の対比つまり子供世代のために親世代が世界をお掃除する中子供たちはそれに甘えるという構図が映像的にも成立していたからこそ、完全に宙に浮いていたロッコにフォーカスが当たったときのあの幻想シーンは本当に気持ち悪い。

老母の葬式に集まったのに"話す"ことといえば"イタリア現代史"のことだし、色々語ろうとして発散した映画だった。死ぬまでに観なくても大いに結構、ロージなら他の映画を入れたほうが彼の弔いにもなるだろう。以上。

追記
編集部もそう思ったのかすぐに外されて「エボリ」がエントリーしている。
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