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ルーヴル美術館訪問のあのレビュー・感想・評価

ルーヴル美術館訪問(2004年製作の映画)
4.5
「ルネサンス前派は嫌いだ」
唐突なルネサンス前派ディスから始まる過激な美術館訪問

そして挙げ句の果てにはクールベを地下牢(地下室?)に閉じ込め続けるのなら放火してやると犯行予告をして終わるという傍若無人ぶり。有名な美術館に行くのなら、観光というよりも、こういうあたおかに連れられて行った方が断然面白いだろうと思いました。

単なる美術館紹介のドキュメンタリー的な枠組みを軽々と飛び越え、「光とそれが浮かび上がらせる色を描いてこそ絵画だ!太陽を信じろ!」的な持論を引っ提げて、見せるべきだと思った絵だけを選択的に見せる様は、あたかも美術館を映画的に編集しているようでした。

基本的に、パンなどを効果的に使って全体を見せてから、細部に潜り込んでいく普段の作風から一貫していました。特に、ヴェロネーゼの絵画で、楽器を弾いている男たちや食卓を切り取って見せたり、ティントレットの絵画で老人の白い脚に焦点を合わせたところは、「ドラクロワといえば「民衆を導く自由の女神」だろ?」くらいの教科書的な教養しかない私のような絵画素人にとっては、絵画愛好家がどういうところを楽しんでいるのか分かりやすく見せてくれているようで、なるほどと思いました。

「セザンヌ」の時はよく分かりませんでしたが、「早すぎる、遅すぎる」などを見た後では、単なる風景や静止画も、ナレーションを効果的に使いつつきちんと映画的に編集されているのだなと分かります。

「救世主の誕生を描きたいのなら、ラッパを吹く天使たちよりも一斉に開花したブドウを描け」というセリフには、起こったことをフィクションとして目に見える形で再現せずに、テキストの朗読のみで完結させるスタイルは、そもそも起こったことは目に見えないのだから、目に見える起こった場所そのものを映すためだったのかと妙に納得させられました。にしても親切ではないなと思ってしまいますが...
あ