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アノマリサのmoryのレビュー・感想・評価

アノマリサ(2015年製作の映画)
3.0
マルコヴィッチの穴の脚本家チャーリー・カウフマン監督脚本のストップモーションアニメ。
 
自分はマルコヴィッチの穴が好きなタイプの人間で、今回も良いもの見せていただけました。

何も知らない真っ新な状態でこの作品に出会えたことに私自身は大いに感謝する一方、ストップモーションアニメに持ちがちなイメージで油断して観てしまうと大怪我(?)する可能性大なので、チャーリー・カフウマンの作風を知らない方には非常にお勧めしにくい作品です。


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以下作品内容に触れているため、
人によってはネタバレに感じられるかもしれません。
チャーリー・カウフマン好きさんは
是非前情報なく観ることをおすすめします。

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自分は実は本作チャーリー・カウフマン監督・脚本ということを知らずに観たので(冒頭出てたかな、見逃したかもです。エンドロールでお名前見つけてほんと納得しました。)、マイケルが空港からホテルで一息つくまでのシーン、これはとんでもない映画を借りてしまったみたいだな?と思いました。

アニメは実写で表現することができないことを描くのが魅力だと思いますが、この作品は真っ向から実写でも撮ることができる世界をアニメ化しており、こんな大変な手間暇かけて何をやらかそうというのだと少し狂気すら感じたのですが、途中くらいから敢えてアニメにした意義がわかってきました。

1つは、実写では規制が入ってしまう部分(特に性的な部分)がギリギリアニメで表現できること。

2つ目は、アニメであるが故にマイケルにコミカルさが生まれ、彼をキャラクターとして受け入れることができること。マイケルは一般的な倫理観で評価したらだいぶ酷い男ですが、キャラクター化されたことでクッションができて客観的に彼の内面を見つめることに役立っている…と自分は感じました。

あと、理由を言語化できないのですが、アニメ化されたことでマイケルとマイケルの内面に集中できた気がします。実際の人物が演じるとどうしてもその人達の感情を読み取ろうとしてしまうからかもしれません。
 
最初、マイケルとマイケル以外の2人劇の感じで声をあてているのかなと思っていたので、リサの声を聞いた時は私もマイケル並みに驚いてしまいました。それでやっと本作のテーマ性の糸口を掴むに至りました。

本作のテーマは複合的ですが、特別が普通になることへの不安と諦め(感情の死・平坦化)、均一化や支配に対する恐怖、を特に感じました。これらはおそらく誰もが共感できるテーマだと思うのですが、こういうとんでもねぇ切り口で表現できるカウフマンの個性に驚くばかりです。

最後のシーンのマイケルは不憫でした。彼の周りの人々も。マイケルはずっとあの世界で生き続けるのだろうか。

マイケルの声はルーピン先生(デヴィッド・シューリスのハリポタでの役)だったんですねー。
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