shunsuke

光りの墓のshunsukeのレビュー・感想・評価

光りの墓(2015年製作の映画)
4.8
アピチャッポン・ウィーラセタクンのこの幻惑的な新作は、観る者に閉ざされゆく過去に思いを馳せさせ、その「過去へのすき間」から広がる無限のイマジネーション、そしてそこから沸き上がる「あるべき未来」を想起させる。夢と現実、老いと若さ、光と闇、男性と女性、現在と過去と未来、生と死・・・これらの境界線が極めて曖昧な映像世界が展開される。そしてこの曖昧性こそが、割り切れない現実に対する極めて誠実な記録(ドキュメント)であることをこの映画は物語っている。
彼の映画にとって、曖昧であることはすなわち真実へと漸近していくある姿勢のことなのだろう。
どんなに残酷であろうと、夢のような現実は、そして現実のような夢は、時間とともに崩れ去り、老女は目をしっかりと見開いてただただそれを見つめ続けるしかない。
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