ダイアー教授

ボクの妻と結婚してください。のダイアー教授のレビュー・感想・評価

3.2
題:自分の死にさえテレビ的な演出を加えたテレビ屋の話

製作:2016年、日本
CAST:織田裕二、吉田羊

タイトルを見て、
「結婚ってことはやることやるんだぞ!どんな性癖の持ち主なんだよ(汗)」
と呆れた。

主人公の織田裕二は膵臓がんで余命幾ばくも無い身。死後妻子の面倒をみる再婚相手を探すという設定だ。

死や結婚、家族をなんだと思ってるんだ?

と作り手の神経を疑いたくなりました。

が、思いのほか良かったです。
この映画を良くしているのは2つあると思います。

1.テレビ業界をメタ的に描いている
主人公、織田裕二の職業はテレビ屋。
軽薄で無責任でノリだけの中身のまったく無い、バラエティー番組の制作者である。

そんなテレビ屋の彼は、自分の死にさえもテレビ的な演出を加え、自分の人生をひとつの「番組」として完成させたのだ!
というメタ的なメッセージがあると思う。

2.織田裕二の役作り
織田裕二はいつもの青島でホワイトアウトな裕二である。
病魔に侵されながら、それを表に出さないように必死。
それが悲壮感を漂わせるが、なかなか上手かったと思う。
眼がしらに、ジーンとくるーッッ!!

笑顔だけど顔色はすぐれない。裕二・羊・泰造の3人で並んで歩くシーンで裕二はマフラーをしている。やつれた顔の輪郭を隠すための演出なのだろう。
マフラーが裕二の役作りだとしたら、これはキター!である。

3.演出と演技
全てを台詞で説明せずに、役者さんの表情や映像表現に委ねる演出がいい。
裕二と吉田羊の抑え目の演技も効果的だったと思う。
それは、何でもかんでも説明して、あまつさえ演者の言ったことにテロップを出す、テレビ的な演出と逆の部分だ。
テレビ屋の映画なのに描き方はテレビ的ではないのだ。

2つと言いましたが、良いところは3つありました。
観る価値はある作品だと思います。