シスジェンダー男性である自分には、この作品に語る資格なんて一切ないように思う(そんなこと関係ない、とも思うけど)。じゃあ何でいまこれを書いてるのか。何か書いておかないと気が済まなかったのかもしれない。
映画として観たときに心に触れるものがあったかというと、そんなことは全然なかった。映画にしてはポエティックすぎるというか。ただ、こうならざるを得なかったことは自分なりに理解している。
レースのように甘美にゆらゆらとはためく詩情の奥に渦巻く性的な欲求に対して、僕は面食らってしまった。と同時に、考えざるを得なかった。この人たちが命をかけて求める「当然の権利」を、自分がいかに当たり前のように享受しているのか。ただ生まれ持ったかたちとこころがために、愛する人をただありのままに愛する権利すら認められないなんて……
愛がすべてではないとは思う。でも愛のない世界にはどんな孤独と苦しみがあるのだろうか。