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Tongues Untied(原題)のmemoのレビュー・感想・評価

Tongues Untied(原題)(1989年製作の映画)
4.5
オンライン上映にて。リズム、スナップ(指を鳴らす)、映像、詩、歌、語り。リミックスのような映像表現で、ダイレクトに脳内に届いてくるような鮮烈なドキュメンタリー作品。

黒人のゲイコミュニティが世間から踏み躙られてきた歴史をなかったことにはさせない、と、強い怒りと決意とともに語られる「言葉」たち。口元だけが映され、誰かわからない人たちの口から侮辱の言葉が飛び交う。そして当事者である黒人のゲイの人たちの「顔」は画面の真ん中に、真正面から捉えられ、彼らはまっすぐにカメラを見つめている。言葉を紡ぐ。歴史を語る。顔と声をもってまっすぐに訴える。

これまでは黙っているしかできなかった、そうでないと生きてこれなかったし、そのほうがいいと思っていた。けれど、受けてきた差別や暴言を声にすること、自分の怒りや悲しみをなかったことにしないことが大切だと「やっと」思えるようになった。それでも実際に声をあげるのは容易ではなかった、という一人の男性の語り。黒人のゲイである自分は、白人だけでなく黒人のコミュニティからも差別を受けてきた、排除されてきた、という事実。当事者の痛みや怒りを丁寧に拾い、紡ぎ、観る者に「決して目をそらさせない」と訴えてくる力のある作品で、見ることができてよかった。
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