ルサチマ

ヨーロッパ2005年、10月27日のルサチマのレビュー・感想・評価

ヨーロッパ2005年、10月27日(2006年製作の映画)
4.6
ストローブ=ユイレの初DV作品だが、2005年10月27日にアフリカ系移民の若者が警察に追われて感電死した事件を経て、フィルムへ拘り続けていたはずのストローブ=ユイレがDVを手にした意味を見出すならば、そこには事件からおよそ半年後に撮られたという事実は見過ごせない。
企画から撮影までがストローブ=ユイレにしては極めて「早い」期間での撮影だったこと、つまりは当時の事件の名残が克明に刻まれた場で撮影をするという条件はかなり大きいように思われる。歴史化される前の記憶の段階でカメラを向けるにあたって、フィルムのアウラは未だ現場に多くの形跡を残す事件現場を審美的に切り取る可能性が高い。SD画質の解像度の低さの中で写実的に記録することを優先したのではないか。
且つ利便性ゆえの撮影スピードを活かすことで、異なる時間でなされる同じカメラの動きの反復を提示し、その反復の中でジャーナリズム的な報道手法からも逃れ、映像同士の微妙な差異を短時間で見せることで、現場に流れる事件を風化させてしまうような長閑な光の流れ、風の動きそのものを異化して提示する。
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